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ケアマネジャーのシャドーワークが保険外サービス化を検討!

ケアマネジャーのシャドーワークが保険外サービス化を検討!

近年、介護現場の中心的な役割を担うケアマネジャー(介護支援専門員)に対して、「業務が過重になりすぎているのではないか」という声が高まっています。

利用者や家族、各サービス事業所との間に立ち、調整や支援を行うケアマネジャーは、地域包括ケアを支えるキーパーソンです。

2024年末に厚生労働省がまとめた検討会の報告書や、2025年4月23日の財政制度等審議会では、ケアマネジャーが担ってきた“見えにくい業務”──いわゆる「シャドーワーク」──に初めて本格的な焦点が当てられました。


従来は報酬対象とならず、暗黙のうちに求められてきたこれらの業務が、現場の大きな負担となっていることが明らかになってきたのです。

こうした背景から、「保険外サービスとして整理すべき業務」「他機関と連携して対応すべき業務」などの分類が行われ、今後の制度改革の動きが注目されています。

本コラムでは、ケアマネジャーのシャドーワークとは何か、その具体像と課題、そして将来に向けた改善策について、簡潔にまとめていきます。



【 目 次 】

  • シャドーワークとは?業務の見えない側面
  • 変わり始めた制度と今後の展望
  • ケアマネが無理なく働くためにできること
  • おわりに:持続可能なケアマネ業務を目指して




シャドウワークとは?業務の見えない側面


「シャドーワーク」とは、報酬や評価の対象とはならないが、業務の中で必要とされ、実際に多くの時間と労力を費やしている“見えない仕事”のことを指します。ケアマネジャーの業務においては、まさにこのシャドーワークが日常的に存在しています。


たとえば、以下のような業務がそれに該当します:

  • サービス利用者や家族からの突発的な相談への対応


  • 医療機関や介護サービス事業所との情報共有・連絡調整


  • 書類作成に伴う確認作業や調査


  • 状況把握のための非公式な訪問や電話連絡


これらは制度上、明確な加算がついているわけではありませんが、ケアの質を保つためには不可欠な業務です。

そのため、ケアマネジャーは「やらざるを得ない」という意識で担ってきました。

しかし、慢性的な人手不足や高齢ケアマネの増加といった背景により、こうした業務が大きな負担としてのしかかっています。

さらに、利用者や家族からは「それが当たり前」と認識されていることも多く、感謝されるどころか、負担の実態すら気づかれにくい状況です。


こうした“見えない仕事”にどのように光を当て、制度の中で位置づけていくのかが、今後のケアマネ制度を左右する大きな課題となっています。


▼シャドーワークについて詳しく見ていく




変わり始めた制度と今後の展望


ケアマネジャーのシャドーワークに対する問題意識は、ようやく制度面でも動き始めました。

2024年末、厚生労働省はケアマネ業務の内容を初めて分類し、「保険外サービスとして対応し得る業務」や「他機関へ委ねるべき業務」などを整理。

これは、ケアマネの業務の“見える化”を進める第一歩となりました。


さらに、2025年4月23日の財政制度等審議会では、こうした業務の一部を保険外サービスに位置づけることで、ケアマネ自身の収入増や負担軽減につなげるべきだとの指摘もありました。

国としては、次の介護保険事業計画(第10期)の基本指針の中で、民間事業者との連携や役割分担についての考え方を明示する方針を示しています。


また、「介護報酬にインセンティブをつけるべき」という踏み込んだ提言もあり、今後はケアマネの“見えない努力”を適切に評価する動きが本格化する可能性もあります。

とはいえ、制度の転換には現場との調整が欠かせません。

現実には、保険外サービスを導入するにあたっての費用負担や、民間との連携の難しさなど、課題も多く残っています。

制度がケアマネの現場を本当に支える形で機能するには、丁寧な議論と実効性ある支援が必要とされているのです。




ケアマネが無理なく働くためにできること


制度改革の動きが進む中でも、ケアマネジャーが今すぐ感じている負担をすべて取り除くことは難しいのが現状です。

そのため、現場では「どうすれば無理なく働き続けられるか」という視点で、さまざまな工夫が求められています。


まず大切なのは、【業務の“見える化】です。

どの業務にどれだけの時間や手間がかかっているのかを記録し、チーム内や管理者に共有することで、適正な業務量の把握や支援体制の見直しにつながります。

これにより、シャドーワークの存在を周囲に理解してもらう第一歩となります。


次に、役割の分担です。

介護職や看護師、事務スタッフなどと連携し、ケアマネでなくても対応可能な業務を任せる体制づくりが効果的です。

特に大規模な事業所や地域包括支援センターなどでは、業務の一部をチームで分担する工夫が広がっています。


また、自身のセルフケアや限界を意識する姿勢も欠かせません。

「頼られることがやりがい」になりがちなケアマネ業務ですが、心身の健康を守ることが、結果的に支援の質を維持することにもつながります。

制度の改善を待つだけでなく、現場から「できること」を積み重ねていくことが、持続可能な働き方への一歩になります。




おわりに:持続可能なケアマネ業務を目指して


ケアマネジャーの仕事は、利用者とその家族の人生に深く関わる、やりがいのある専門職です。

しかし、その役割が広がるにつれ、業務は目に見えない部分まで膨らみ、今や限界に近づいていると感じる現場も少なくありません。


ようやく制度の側でも、シャドーワークに目を向ける動きが始まりました。

保険外サービス化や業務の見直し、報酬のインセンティブ化など、これまで「当たり前」とされていた無償の努力に、正当な評価を与えようという流れが見え始めています。

それでも、制度が現場の実情に追いつくには、時間と対話が必要です。


その間、ケアマネ一人ひとりが自分の働き方を見つめ直し、チームで支え合う姿勢を持つことも、非常に大切になります。

「やさしさ」に頼りきりにしない社会へ──。

ケアマネジャーが専門性と誇りをもって働き続けられる環境づくりは、介護を支えるすべての人の安心にもつながります。

これからの制度づくりに、私たち一人ひとりの理解と後押しが求められています。

「介護ぷらす+」を運営している株式会社フェスコムは

医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」において

厚生労働省より医療・介護分野の認定事業者として認定されています。