介護保険制度が2000年に施行されて以来、ケアマネジャーの活躍は誰もが周知の事実でしょう。
ケアマネジャーの業務は多岐にわたりその仕事のハードさも周知の事実でしょう。
今回はケアマネジャーの業務範囲について、特に「シャドーワーク」と呼ばれる業務について説明していきます。
目次
そもそもシャドーワークとは
シャドーワークの例
シャドーワークをめぐる動き
そもそもシャドーワークとは
「シャドーワーク」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
シャドーワークとは、「影の仕事」という意味で、イヴァン・イリイチ(オーストリア、ウィーン生まれの哲学者、社会評論家、文明批評家)の造語で、専業主婦などの家事労働など報酬を受けない仕事を指します。
シャドーワークに分類されるものとして、生活費基盤を維持するものがあげられます。
・家事
・妊娠や出産
・子育て
・介護
等がシャドウ・ワークに含まれると考えられています。
また、同じく賃金の払われない労働といわれている仕事もあります。
・サービス残業
・通勤時間
・職場の付き合いの飲み会参加
・自己啓発に充てる時間
・ボランティア
介護分野では現在、ケアマネジャーの人材不足が深刻化しています。
ケアマネジャーの業務を超えた幅広い仕事内容を見直し、人材確保につなげようとケアマネジャーのシャドーワークを減らす方向で国で議論が進んでいます。
では、ケアマネジャーのシャドーワークとはどのようなものでしょうか。
シャドーワークの例
実はケアマネジャーの9割近くがシャドーワーク(ご利用者さまの生活に不可欠だが、無報酬の仕事)に取り組んでいるといわれています。
介護保険制度のご利用者さまが増える一方で、ケアマネジャー業務にも増えていること、すなわちシャドーワークが多々あります。
ではケアマネジャーのシャドーワークにはどのようなことがあるのでしょうか。
・加算を算定しない通院同行
・公共料金の支払い代行
・掃除、洗濯、買い物
・申請書書類作成
・救急車への同乗
・病院の電話の予約、医師の説明同席などがケアマネが行うシャドーワークの一例になります。
こういったこともケアマネの仕事の一部なの?と驚かれる人もいるかもしれません。
ご利用者さまさんの生活への配慮、ケースに関わるメンバーの意見、そしてケアマネジャーとしてやるべきことなのかという葛藤を繰り返し、最も円滑にいく方法としてケアマネジャーがシャドーワークを行うということが多いようです。
昨今、独居や高齢世帯の増加により、ケアマネジャーが行うこのシャドウ・ワークが増加しているといわれています。
シャドーワークをめぐる動き
ケアマネジャーのシャドーワークについて国としてはどのような見解を示しているのか見ていきたいと思います。
2024年3月、日本介護経営学会が開催したシンポジウムがありました。
そこで厚生労働省の老健局長がケアマネの無償労働(シャドーワーク)について言及しました。
「ケアマネジャーの皆さんはシャドーワークが非常に多い」と指摘したうえで、次のように講演しました。
「例えば、スーパーで買物をしてきてくれと当たり前のように言われる。もちろんその方(高齢者)にとっては必要で意味のあることだが、それはケアマネジャーがシャドーワークで、無償で行う話なのかどうか、整理していかなければいけない」
「生活の課題を抱える高齢者を誰が支えるのか、それは無償ですべきことなのか、これから議論していかなければならない。ケアマネジャーの業務についても整理すべく調査を行っている」
などと語り、ケアマネジャーのシャドーワークを減らす方向で国で議論が進んでいます。
今後、どういったケアマネジャーの業務整理についてどのような議論が行われていくのか、引き続き注目していきましょう。