ケアマネジャーは、介護サービスが必要な方一人ひとりの状況に合わせて、必要な介護サービスを組み合わせた「ケアプラン」を作成する、いわば介護のコーディネーターです。いったいどんな資格職なのでしょうか。解説します。
目次
- 【1】ケアマネジャーってどんな資格?
- 【2】ケアマネジャーの仕事内容は?
- 【3】ケアマネジャーのメリット・デメリットは?
- 【4】開業だって可能!介護業界で働くならいずれ取得したい資格
脳疾患が原因で認知症がはじまったり、転倒をきっかけに寝たきりになったり…。
介護が必要となるきっかけや、どのような介護サービスが必要となるかは、一人ひとり異なるものです。
ケアマネジャーは、介護や支援が必要となった高齢者の方の状況をチェックし、今後どのようなサービスをどのぐらい受ければいいのかをまとめた「ケアプラン」と呼ばれる、介護サービスの利用計画を立てる専門職です。その資格取得方法や、仕事内容を解説します。
ケアマネジャーってどんな資格?
ケアマネジャーは、正式名称を「介護支援専門員」という介護の資格職。2000年4月にスタートした介護保険制度にともなって誕生した資格です。介護福祉士や社会福祉士が「国家資格」であるのに対し、ケアマネジャーは都道府県が実施する「公的資格」にあたります。
ケアマネジャーの受験資格
誰でも受験することができる介護職員初任者研修や実務者研修とは異なり、ケアマネジャー試験を受ける場合、一定の要件を満たしていないと受験資格を得ることができません。
受験資格は、「保健・医療・福祉に関する法定資格に基づく業務に5年以上従事した者」「特定の施設で生活相談員・支援相談員・相談支援専門員・主任相談支援員の業務に5年以上従事した者」のいずれかであることが条件※として求められます。いずれにしても、介護や医療、福祉などの現場で、最低でも5年間実務経験を積む必要があるため、簡単に取得できる資格とはいえません。
※ 2015年2月、ケアマネジャー試験の受験資格の改定が行われました。猶予期間として、2017年試験までは「特定の福祉施設・介護施設に5年以上従事した者」「ホームヘルパー2級・社会福祉主事任用資格者で介護等業務に5年以上従事した者」「無資格で介護等業務に10年以上従事した者」も受験資格を得られる要件として認められていましたが、2018年から受験資格が変更となっていますので注意が必要です。
ケアマネジャーとして働くには?
ケアマネジャーとして働くには、試験に合格するだけではなく、次のステップで介護支援専門員として登録する必要があります。
- 介護支援専門員実務研修受講試験(通称ケアマネ試験)の受験資格を満たす
- ケアマネ試験に合格
- 介護支援専門員実務研修の修了
- 介護支援専門員資格登録簿への登録申請
- 介護支援専門員証の交付申請
- ケアマネ業務に就く
介護の最難関資格?ケアマネジャー試験の難易度
2016年に実施された、第19回ケアマネ試験の合格率は13.1%。過去5年のなかでも最も低い結果となりましたが、ケアマネジャー試験の合格率は例年20%以下で推移しており、非常に難易度が高い資格といえるでしょう。
中には独学で試験まで進もうとする方もいますが、多くの方が通信講座やスクールを活用して学んでいます。受験資格を満たすために実務経験を積みながら試験対策を行うのが一般的ですので、夜間コースや通信講座での受講が特に人気です。
ケアマネジャーの仕事内容は?
ケアマネジャーの仕事は主に以下の4つです。
要介護者とその家族の介護相談
介護サービスを利用する方の理由はさまざまです。けがや病気をきっかけに施設に入所するケースもあれば、在宅介護を続けてきた家族が介護を続けるのが難しくなって、入所を決めるケースもあります。ケアマネジャーは介護サービスを利用する方とその家族の要望をヒアリングし、より希望に合った介護サービスが受けられるよう、さまざまなサポートを行います。
適切な援助を行うには、要介護者本人や家族はもちろん、かかりつけの病院や地域の介護サービス事業者など、多くの方と連携体制を整え、状況を把握していくことが大切となります。また、主治医や家族を集めて、定期的に話し合いの場を設けることも、ケアマネジャーの大切な業務です。
要介護認定の申請書類作成の代行
介護サービスを受けるには、まずどのぐらい介護が必要な状態なのか知る必要があります。介護が必要な状態を示すものさしが、要支援・要介護といわれるものです。要支援は要支援1と要支援2の2段階、要介護は要介護1から要介護5までの5段階にわかれており、段階(レベル)によって利用できる介護サービスの範囲や量、負担料金の上限などが異なります。
要介護認定は、申請者本人か家族が、申請者が住んでいる自治体の窓口に出向いて行うのが一般的。ですが、申請方法がわからず戸惑ってしまったり、入院をしていて出向くことができなかったり…といった事情を抱えている場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などに申請を代行してもらうことができます。
ケアマネジャーは介護サービスを知り尽くしたプロフェッショナルですので、所属する事業所によってはこういった申請代行業務を行うことも少なくありません。また、介護度があがったときの認定調査や申請書類作成の代行なども行います。
ケアプランの作成
ケアプランは、施設を使用する高齢者の方の状況や要望にもとづいて「これからどんな生活を送りたいか」などの目標を設定し、その目標にむけて利用するサービスの種類や頻度を決めた利用計画書のことです。要介護認定を受けて、介護保険サービスを利用するときに必要となります。
ケアプランは次の流れで作成されます。
- ケアマネジャーがアセスメントを行う
- 入所している施設のケアマネジャーは、その高齢者の方の健康状態や生活環境、家庭環境を把握し、どのような介護サービスが必要なのかを評価・分析します。そして、本人とご家族の要望をヒアリングし、そのうえで「今後したいこと」「できるようにしたいこと」などの具体的な目標を立てます。
- 主治医や家族を集めて会議を開く
- アセスメント後は、主治医やご家族を集めて会議を開き、目標にズレがないかなどを確認します。そして、「ケアプランの原案」を作成します。
- ケアプランの原案の説明を行い、同意後、正式にケアプランが作成
- 主治医や家族との会議が終わったら、ケアマネジャーからケアプラン原案の説明(最終確認)を行います。その原案にご本人とそのご家族が同意してはじめて、正式にケアプラン作成されたことになります。
ケアプランは、ケアマネジャーを通さなくても、要介護者本人や家族が作成することもできます。自作したケアプランは「セルフケアプラン」と呼ばれ、不必要なサービスを減らせるなどのメリットがあるといわれています。とはいえ、点数計算など専門的な知識が必要ですので、自作する方はごく少数。ほとんどの方が、ケアマネジャーに作成をゆだねています。
モニタリング
ケアマネジャーの仕事は、ケアプランを作成するだけではありません。サービス利用者の方のもとを定期的に訪問し、健康状態やサービスなどのモニタリングを行います。そのときに、サービスがきちんと提供されているかどうかや、サービスが利用者の方に合っているかどうか、状態に変化はないか、サービスに満足できているか…などをチェックし、必要に応じてケアプランを変更します。
現場仕事よりも事務作業が中心に
そのほか、介護保険の給付請求や各介護サービスとの連絡を取ったり、スケジュールを調整するのもケアマネジャーの仕事です。介護職と言うと、現場で高齢者を介助する仕事のイメージが強いですが、ケアマネジャーはパソコンによる書類作成や連絡調整業務など事務的な仕事が中心になります。そのため、実務経験と資格の専門知識に加え、事務処理能力やコミュニーション能力も求められます。
ケアマネジャーのメリット・デメリットは?
介護の現場経験者が圧倒的に多いケアマネジャー。介護職と比較した場合、ケアマネジャーの仕事にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ケアマネジャーのメリット
- 就職・転職しやすい
- 賃金アップが見込める
- 日中の仕事が主になり、休みも取りやすくなる
ケアマネジャーの仕事はマネジメントや事務作業がメイン。介護現場のような夜勤を行うことがなくなるので、プライベートの時間を確保しやすくなるのは大きなメリットです。また、ケアマネジャーの賃金は一般的な介護職よりも高めに設定されているうえ、居宅介護支援事業所を独立開業することも可能ですので、やり方次第では大きな賃金アップが見込めるでしょう。
ケアマネジャーのデメリット
- コミュニケーション能力が必要
- 事務作業能力
ケアプランを作成するにあたって、サービスを利用する本人や家族、かかりつけ医などさまざまな方と、話し合いの機会が多くあります。
それぞれの希望や意向が異なり、ときには険悪な雰囲気になってしまうことだってありますから、うまく折り合いをつけていけるよう解決策を提案していく能力が求められます。また、書類作成などの事務作業も多いため、事務作業能力やパソコンスキルも必要になります。
開業だって可能!介護業界で働くならいずれ取得したい資格
最近ではケアマネジャーとしての実務経験を積み、独立して個人で居宅介護支援事業所を開設する方も増えています。将来のキャリアアップのためにも、介護の現場で働く方はケアマネジャー資格の取得を視野に入れておくといいかもしれません。