時間制正社員制度は、働く時間が短くても正社員として働け、短時間の勤務でも正社員としてのメリットを受けることができる新しい働き方です。
これまで育児や介護など、様々な理由によって仕事を続けることができなかった人や、仕事に就くチャンスを得られなかった人たちが、仕事に就けたり、仕事の継続ができるようになる制度で、病気や事故などによる長期入院などにも対応できる制度となっています。
目次
- 「時間制正社員制度」の特徴
- 業界初!パナソニックが介護職の分野で「時間制正社員制度」を導入
- 「時間制正社員制度」はこんな方にオススメの働き方
- 「時間制正社員制度」の労働者側の2つのメリット
- 「時間制正社員制度」の企業側の3つのメリット
- 「時間制正社員制度」の労働者側と企業側のデメリット
- まとめ
時間制正社員制度は、働く時間が短くても正社員として働け、短時間の勤務でも正社員としてのメリットを受けることができる新しい働き方です。
病み上がりの方などの短い勤務であっても正社員と同じ給料と退職金が保証されているのが魅力で、最近注目を集めています。
「時間制正社員制度」の特徴
時間制正社員制度の最大の特徴は「必ずしもフルタイムで働く必要はなく、正社員と同じ、もしくはそれ以上の意欲や能力があるものの、長い時間は働けない方にあわせた時給制の雇用形態」という点です。
正社員と比べて、1週間の決められた労働時間が短い正規の社員という扱いで、以下の2つの契約に該当する社員のことを言います。
①期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
②時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種の正社員と同等
ちなみに、正社員とは「1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務等)で、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した正社員」を指します。
業界初!パナソニックが介護職の分野で「時間制正社員制度」を導入
パナソニック エイジフリー株式会社は業界で初めて、介護職を対象に時給制で勤務時間を選べる「時間制正社員制度」を2018年4月より導入することを発表しました。
パートタイマーは無期雇用の時間制正社員を選ぶことができ、賃金は正社員(月給制)と同水準です。その上、退職金制度まで適用されます。
パナソニックがこの制度を導入する理由は、以下の2つです。
・優秀な人材の確保と定着
・それによる継続的に高品質な介護サービスを提供
どれだけ優秀な人材でも、病気や家族の介護、産休、育休など、様々な事情によりフルタイムで働くことが難しい人はたくさんいます。
でも短時間なら負担なく働ける、そして企業側も優秀な人材は確保したい。
そんな背景と両者のメリットがあり、時間制正社員制度の導入が決まりました。
時間制正社員制度の導入により、従業員側は長期にわたって安心して意欲的に働ける環境が整い、働く満足度が高まる。企業側は高品質な介護サービスの提供と人材確保ができるということでWINーWINの関係が成り立っています。
「時間制正社員制度」はこんな方にオススメの働き方
では、どんな人が「時間制正社員制度」に向いているか、もう少し具体的に見てみましょう。
・育児や介護などと仕事を両立したい社員の方
・決まった日時だけ働きたい方
・定年後も働き続けたい高齢者の方
・パートタイムでもキャリアアップをめざしたい方
・その他、事情によりフルタイムでは働けないが、短時間であれば出勤できる方
このように「時間制正社員制度」は様々な人に勤務時間や勤務日数をフルタイム正社員よりも短くしながら、十分に活躍してもらうための制度になっています。
「時間制正社員制度」の労働者側の2つのメリット
「時間制正社員制度」を利用して働く側には以下の2つの大きなメリットがあると言えます。
キャリア形成の実現短時間の勤務でも正社員と同じ扱いで正規雇用として働くことで、それがしっかりとしたキャリアになります。
なにか特別な理由で一時的に職を離れても再就職がしやすくなり、キャリアアップへの挑戦もできます。
子育てや介護などの理由からフルタイムで働けない方や高齢者など時間や体力的にもフルタイムでの勤務を希望しない方、派遣社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトで働いていた方などにとっても仕事に就ける機会が広がり、キャリアの形成や処遇改善、モチベーション向上につながり、賞与や退職金の支給に対する不安もなくなると言えます。
労働者のワークライフバランスの実現時間制正社員は多くの場合1日4~6時間勤務となります。
子育てや介護との両立を図るだけでなく、自己啓発や勉強、ボランティア活動に時間を費やすこともできます。
無理に残業したり休日出勤をする必要がなく、心身共に健康な状態を作りやすくなり、経済的な不安を持たずにワークライフバランスを整えられます。
「時間制正社員制度」の企業側の3つのメリット
さて、一方で企業側には以下の3つの大きなメリットがあります。
意欲・能力の高い人材の確保子育てや家事とのバランスをとるために短時間の勤務を条件にして多くの人は仕事を探しますが、正社員として受け入れてくれる企業が見つからないため、正社員勤務を断念する場合が非常に多いが現実です。
しかし、この制度を利用することで、上記のような意欲や能力を持った正社員を獲得できる可能性が広がり、将来の人手不足に柔軟に対応することが可能になります。
リスクの分散時間制正社員が増えると、病気やケガなどにより長期で休む社員が出た場合、社員数が多いのでリスクを分散しやすくなり、突然の欠員などの事態にも対応しやすくなります。
生産性の向上1人が長時間働くよりも、多くの人が無理のなくバランスよく働くことで、一人一人の高いパフォーマンスを期待できます。
また、社員の定着率やモチベーションの向上につながり、競争力の強化や生産性の向上につながります。
「時間制正社員制度」の労働者側と企業側のデメリット
ここまでメリットを述べてきましたが、デメリットも知っておきましょう。
労働者側のデメリット
【管理職などへの昇進が厳しい)
時間制正社員は多くの場合、4~6時間勤務の人が多くなるため、なにかトラブルが起きたときの対応や責任をとる管理職の役割を担うことが難しくなります。
今の立場で安定して働きたい人であれば問題ありませんが、昇進をしたい方にとっては、それがデメリットになります。
企業側のデメリット
【必要経費が増える】
時間制正社員の数が増えれば増えるほど、社員数が増えることにつながります。
そうなると備品などの経費も必要になり、事務手続きも増えることになります。
研修を行う場合、その費用も人数分必要となり、人数が増えることで必要経費が増える一面もあります。
【正社員との確執】
正社員と短時間勤務の正社員の間でいざこざが生まれる可能性はゼロではありません。
給料や評価制度をしっかりと整え、公平な制度となるように色々と調整する必要があります。
たとえば時間制正社員が帰宅したあとにトラブルが起きた場合、必然的に残った社員で対応することになり「短時間正社員は、楽して稼いでいる」「なんで自分たちが尻拭いをさせられなきゃいけないのか」など、正社員の不満が溜まる原因にもなります。
また、他には「いくら短時間でも正社員なんだからしっかりしてほしい」と思うのに対し、短時間正社員は「短時間で働く約束だから」と、このようなギャップが生まれやすくなる可能性はあるでしょう。
まとめ
今回は「時間制正社員制度」をご紹介しましたが、いかがでしたか?
仕事と育児や介護の両立の実現ができる人が増え、少子高齢化への対応できることは、超高齢化社会を目前にしている日本にとっては国全体として大きなメリットになると言えます。
そして、企業側も会社の競争力の向上を目指すことにも繋がります。
労働力が年々著しく減少していく中で有能な人材を確保できるという企業としてのメリットもあるため、働き方改革の必要性が高まっている今、より多くの企業が「短時間正社員制度」の導入を積極的にしていくべきではないでしょうか。