優しく包み込むように触れるだけで、気持ちが落ち着いたり、痛みが和らぐなどの効果を得ることができるタクティールケア。スウェーデン発祥の、医療や介護の分野で注目されているケア方法ですが、いったいどのようなものなのか、くわしくまとめてみました。
目次
- タクティールケアの起源とは?
- 効果が得られる秘密は?
- タクティールケアの方法は簡単!
- 介護現場でも効果はバツグン!
- タクティールケアを学ぶには?
- 優しく触れる、それだけで効果を得られるタクティールケア
抱っこされていると安心して眠る赤ちゃんや、泣いていたのにお母さんに抱きしめられると笑顔になる子どものように、優しく包み込まれることで不安な気持ちが落ち着いたという経験は誰でも一度はありますよね。
優しく触れるということによって得られる効果に注目し、医療や介護の現場で取り入れられているタクティールケア。
これからくわしくご紹介します。
タクティールケアの起源とは?
タクティールとは、ラテン語の『タクティリス(Taktilis)』に由来し、触れるという意味を持っています。
日本でも昔から、怪我や病気のときに手を当てて治療することを『手当て』と言っていましたが、タクティールケアも痛みのある部分に手を触れることで、治癒力を高める効果があるとされています。
ツボや筋肉を刺激するマッサージと違い、優しく包み込むように触れることで、効果を得ることができるタクティールケア。
1960年代に、未熟児のケアを担当していた看護師が、毎日タッチケアを行うことによって乳児の体温の安定や体重増加という効果が見られたことから始まりました。
現在では、触れることによる効果を方法として確立しています。
日本では、2005年に日本スウェーデン福祉研究所が設立され、2010年にフジテレビの新報道2001で取り上げられるなど、広がりを見せています。
効果が得られる秘密は?
タクティールケアを行うと、痛みの軽減や安心感をもたらす効果があるとされていますが、その秘密は、“オキシトシン”の効果とゲートコントロール。
“オキシトシン”は、脳の視床下部で作られ、下垂体から分泌されるホルモンの1つで、別名“幸せホルモン”や“愛情ホルモン”“思いやりホルモン”“絆ホルモン”“信頼ホルモン”などと呼ばれています。
優しく包み込むように触れることによって、触覚が刺激され、オキシトシンの分泌が促されるとされています。
血液中のオキシトシンの濃度が上昇することで、幸せな気分になったり、安心を感じたりします。
オキシトシンによってこうした気分になる仕組みはゲートコントロールが関係しています。
脊髄には脳に痛みを伝えるゲートがありますが、オキシトシンにはこのゲートを閉じる働きもあるとされており、痛みを和らげるんです。
海外の研究によると、タクティールケアによって、血液中のオキシトシンの量が増えるだけでなく、ストレスを感じた時や不安を感じた時に増えるホルモンであるコルチゾールの量が減少したという結果も得られているようです。
タクティールケアの方法は簡単!
優しくお肌を包み込むことで、幸せな気分になったり痛みを和らげる効果があるとされるタクティールケア。
その方法はとっても簡単!手へのタクティールケアを例にしてご紹介します。
- 相手と向かい合って座り、自分の手を手のひらを上にして差し出します。
- 自分の手の上に相手の手を重ねます。
- その手の甲の上に、自分のもう一方の手を重ねてぴったりと包み、両手で相手の手を包み込みます。
- そのまま10秒ほど動かさずにじっと包み込みます。
- 包んだ両手を、相手の指先の方へゆっくり滑らせ、指先まできたら片方ずつ元の位置に戻します。
- 反対の手に対しても、同じようにケアを行います。
タクティールケアは、ゆったりとしたスピードで10分程度行うのがポイントです。
もみほぐすということもしないため、マッサージをイメージしている人にとっては物足りなさを感じるものと言えますが、ケアを始めてから数分で身体がぽかぽかとして、その効果を実感することができるとされています。
さらに、ケアを受けた人の身体が温かくなるほか、深い呼吸ができるようになるなど、さまざまな効果が期待できます。
それに加えて、ケアを受ける人だけでなく、ケアを行う人も同じように心地よさや安心感を感じることができるんです。
しかし、すべての人が効果を実感できるというものではありません。特に認知症の方は人に触られることを嫌がる方もいらっしゃるため、望まない方に対してはムリにケアを行わないことも大切です。
介護現場でも効果はバツグン!
介護の現場でタクティールケアを行うことによって、ケアを受けた人が穏やかになったり、ケアを行う人・ケアを受けた人が心と心で交流することができるなど、高い効果を得ることができます。
このほかにも、ケアを行う側からも、不安な気持ちや表情が和らいだり、優しい気持ちになることができたという声も聞かれています。
10分程度の短時間ではあるものの、施術の間に眠る方もいらっしゃるほどリラックス効果が高く、認知症の方との関係を築くためにも重要な方法として注目されています。
タクティールケアを学ぶには?
タクティールケアを学ぶには、日本スウェーデン福祉研究所が主催しているタクティールケアIコースがオススメです。
タクティールケアIコースでは、触れることの基本について、座学の他、手や足・背中への実技を通して学ぶことができます。
2日間の講習終了後、受講証明書を発行してもらい、規定の実習を終了後に認定試験を受けることで認定資格が得られます。
ただし、認定資格取得後、施設内でのタクティールケアはできますが、タクティールケアで営業することや、他の人に対して指導することはできないので注意です。
この他に、タクティールケアIコースを修了した方を対象としたコースもあります。以下の表にまとめました。
コース名
①タクティールケアIフォローアップ講座
②クティールケアファミリーハンドコース
③タクティールケアⅡコース
受講内容
①タクティールケアの復習
②手へのタクティールケアを学ぶことができる
③顔や頭・腹部に対してのケアの応用を学ぶことができる
しかしこれらの講座を修了した場合も、タクティールケアで営業をすることや、他の人に対して指導することはできません。
タクティールケアで開業したいという方は、『JSCI認定のタクティールケアIセラピストコース』を受講し、ライセンスを取得する必要があります。
現場でタクティールケアを実施したいという方は、まず、タクティールケアⅠコースを受講して、正しい方法や理論を学ぶことがオススメです。
タクティールケアⅠコースは、全国各地で開催されています。どこで受けることができるかは、日本スウェーデン福祉研究所のホームページで確認することができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
(日本スウェーデン福祉研究所:https://jsci.jp/kouza/#kouza2)
優しく触れる、それだけで効果を得られるタクティールケア
“ただ優しく包み込むように触れる”だけなのに、高齢者施設や医療施設で高い効果が得られているタクティールケア。
ケアを受ける方だけでなく、ケアを実施する方も癒される方法として、注目が集まっています。
人と人の信頼関係を築くためにも、ますますニーズの高まるケア方法といえますね。