高齢者の地域での生活を支える“地域ケア会議”。
地域の問題を発見し、必要な支援の充実を目的としていますが、どのような会議でどのような人が参加するのでしょうか?
詳しくご紹介します。
目次
- 地域ケア会議とは?
- 1.さまざまな職種が参加!
- 地域ケア会議の持つ機能とは?
- 1.個別課題解決機能
- 2.ネットワーク構成機能
- 3.地域課題発見機能
- 4.地域作り・資源開発機能
- 5.政策形成機能
- 地域ケア会議の流れは?
- 1.個別のケースについて検討する場合
- 2.地域の課題について検討する場合
- 地域ケア会議の実例をご紹介!
- 地域の問題を発見し、解決していく取り組み
少子高齢化が進む中、高齢者が地域で暮らすうえで生じる問題の発見や、高齢者の地域での生活を支えるために必要な支援の検討を行う地域ケア会議。
市町村や地域包括支援センターによって運営されていますが、いったいどのような会議なのか、詳しくレクチャーします!
地域ケア会議とは?
地域ケア会議とは、高齢者が住み慣れた地域で生活し続けるために必要な支援を充実させることと、それを支える社会基盤の整備を同時に行う“地域包括ケアシステム”を目的に開かれる会議のこと。
市区町村によっては、定期的な開催がなされていなかったり、開催されても地域問題を検討するところで終了し、地域づくりや介護保険事業計画への反映がなされていないケースが多く見られたため、2015年4月1日に施行された介護保険法によって、努力義務として位置づけられています。
地域包括支援センターまたは市町村が中心となって運営し、高齢者一人一人のケースにおいて、支援内容の充実を図ることや、個別のケースにおける課題の分析を積み重ねて地域の課題を明確にすることによって、課題解決のために必要な地域づくりや介護保険事業計画への反映等につなげていきます。
また、地域ケア活動には、介護支援専門員のケアマネジメントの実践力を高めるという目的もあるとされています。
さまざまな職種が参加!
高齢者の実態を把握し、自立した生活を送るために必要な支援内容の充実や、地域における課題を把握することが目的の地域ケア会議。
地域福祉課や障害福祉課などの自治体職員の他、介護支援専門員、包括職員、医師や看護師・リハビリ専門職などの医療関係者、民生委員、介護サービス事業者、社会福祉士など、さまざまな職種の人が必要に応じて参加しています。
専門職の他に、地域の問題に詳しい自治会の代表者が参加することもあり、他職種が参加することによって、ケアマネジメントだけでなく、地域課題の把握や解決のために何が必要なのかを検討する地域支援ネットワークの構築につなげることができるようになっています。
他職種が会議に参加することによって、お互いに顔が見える関係になることや、利用者の情報を共有することが可能となります。
また、相手の職種の役割や限界についても知ることができるので、役割の分担がうまくいき、チーム全体としての能力が高まることも期待できるといえます。
地域ケア会議の持つ機能とは?
地域ケア会議の持つ機能は
- 個別課題解決機能
- ネットワーク構成機能
- 地域課題発見機能
- 地域作り・資源開発機能
- 政策形成機能
の5つとされています。
1と2の機能で個別ケースの支援内容の検討を、そして、4と5の機能によって地域課題の検討を行います。
これらの機能が関連を持つことによって、うまく機能するように参加者の範囲を決めるようになっています。
それぞれ、どのような持っているのか、簡単にレクチャーします!
個別課題解決機能
個別課題解決機能には、2つの役割が存在しています。
1つは、自立支援に関しての課題を解決するための支援。
そして、もう一つが、そのプロセスを経験することによって専門員等の課題解決能力の向上を図り、自立支援に関するケアマネジメントの支援の質を高めていくということとなっています。
適切なサービス提供の方法を蓄積して自立支援困難な事例に対しての相談・助言等を行うことによって、個別のケースについて解決するだけでなく、他の機能につなげていくことができます。
ネットワーク構成機能個別のケースについて検討することによって、関係する期間の役割を明らかにし、課題の解決のための連携を強固にすることが可能となると同時に、住民との情報共有や課題の優先度について判断することにつながります。
地域課題発見機能
個別のケースについて検討する中で、同じような課題を抱える利用者や、その予備軍となる対象者を見つけ、提供されるケアの質やサービス資源についての課題など、地域の課題を明らかにしていきます。
また、その課題について、関係機関の役割分担等が明らかになる事で、必要なサービスの検討につなげることができます。
地域作り・資源開発機能
この機能は、社会資源の調整や新たな資源の開発の検討などを行うもの。
地域によって実態が異なるため、それぞれの地域の課題における解決策を講じて地域づくりを行っていく必要があります。地域ケア会議を行うことで、関係者の役割分担をして、地域づくりや資源開発につなげていきます。
政策形成機能
発見された地域の課題について、解決するための政策を立案し、需要に見合ったサービスの基盤整備や国・都道府県への提案等を行います。
地域ケア会議に参加する人や会議の規模は、検討する内容によって異なりますが、地域の関係者の連携を強化し、住民のニーズやケア資源の現状を把握・共有することで、市町村レベルの対策を講じることができます。
自助・互助・共助・公助を組み合わせた地域の体制を整備することで、地域住民が安全に、そして、安心して生活することができる環境を整え、住民のQOLの向上につなげることが可能となります。
地域ケア会議の流れは?
市町村や地域包括支援センターが主催して運営される地域ケア会議。
個別のケースについて検討を行う場合と、地域の課題について検討する場合があります。
個別のケースについて検討する場合
個別のケースにおいて、地域ケア会議を開くことが有効なのは
・支援が必要なサービスが提供されていない場合
・支援することによって自立を妨害している場合
・地域課題に関する場合
など。
市町村への相談や介護支援専門員の他、地域包括支援センターへの相談から、検討するケースを選びます。
対象となるケースを選定後、概要についての聞き取り等を行い、会議を開催します。
会議では、事例を通して、問題の緊急性や必要な支援・対応について検討を行い、参加している職種で、担当する役割や目標を決定します。
地域の課題について検討する場合
地域の課題について検討する場合、地域に必要な施策や政策の立案や地域資源の開発を目指します。
個別のケースについて検討する中で明らかになった“地域に不足している資源”や“これから問題が顕在化すると予測される地域の課題”等について、会議を開きます。
日常生活を送る生活圏と市町村が異なっている場合、市町村を超えて地域ケア会議を開催することが必要となります。
地域ケア会議の実例をご紹介!
地域ケア会議は、さまざまな地域で開催されていますが、ここでは広島県尾道市の北部地域包括支援センターでの取り組みについて、ご紹介します!
北部地域包括支援センターでは、平成26年1月から毎月最終月曜日に地域ケア会議が定期的に開催されています。
参加者は本人やその家族の他、かかりつけ医・訪問看護ステーション・介護保険サービス事業所・居宅介護支援事業所となっています。
1人暮らしで認知症の方が買い物の際に支払いを忘れるなどの金銭トラブルがあるという問題について会議が開催されたという事例を元に、認知症でも住みやすい地域づくりを行うために、スーパーの職員を対象とした認知症サポーターの養成講座を開催するという取り組みを行っています。
会議に参加した民間のデイサービス職員の発案によって、町内や院内に認知症カフェが誕生し、認知症の方本人やその家族が語り合ったり、専門職に相談できる場所として利用されています。
地域の問題を発見し、解決していく取り組み
医療や介護、そして生活支援を必要とする高齢者が増加している中で、高齢者が地域で生活を続けるためにはさまざまな問題が起こりえます。
地域ケア会議は、地域で生活するにあたって生じる問題を、サポートする家族や行政職員、専門職の人が集まって対策を検討することによって、高齢者がその人らしく生活することができる地域づくりを実現する取組みとして、今後ますます利用されていくことが期待されます。