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社会保障制度がなくなる?「2025年問題」に見る日本の未来

社会保障制度がなくなる?「2025年問題」に見る日本の未来

団塊の世代が後期高齢者に突入することによる社会保障給付費などの支出増と、それを支える側の若者の所得格差や少子化による人口減少が原因の収入減。これにより、近い将来に社会保障制度が崩壊するという見通しが立てられています。


目次

【1】支出増の原因は?

【2】所得格差はどこから生まれたの?

【3】「所得の再分配」って?

【4】2025年問題と就職氷河期世代の関係

【5】高齢化にも少子化にも関わる人材不足問題

【6】問題を先送り?「国債」の不思議

【7】支出増への対応

【8】収入減への対応

【9】まとめ


支出増の原因は?

現在の日本の社会保障制度は、高齢者への給付の割合が高くなっています。「特に高齢者に優しい」と言えば素敵な方針に聞こえますが、このままだと高齢者がぐんと増加する2025年になる頃には給付に充てるお金が無くなってしまいますよね。


日本では、給付に関する制度と負担に関する制度を同時に制定していませんでした。それが原因で、経済危機による負担の増加を考えずに給付額を上げる制度だけが制定されてしまったんです。


所得格差はどこから生まれたの?

現在の深刻な所得格差は、バブル崩壊やオイルショック、リーマンショックといった経済悪化を原因としています。

その延長線で、就職氷河期世代(1970~1980年代初頭)の低所得・非正規雇用者がおおくなってしまったこと、そしてそれに対応できるはずの社会保障の「所得の再分配」という役割が機能していないことが大きな問題です。


「所得の再分配」って?

「所得の再分配」とは、収入が多い人の資産の一部を収入が少ない人に分けて所得格差を解消し、最低限の生活や機会の保障をしようというものです。

では、なぜこの「所得の再分配」が機能していないのでしょうか?


まず、日本の社会保障制度は家族などを対象とした給付が多く、個人を対象とした給付はそう多くありません。そのため、所得格差に対応するために必要な「低所得者向けの保障制度」も少ないんです。

また、所得税や法人税といった直接税をかけることで社会保障費を確保しようとすると、海外に資産を逃避させて高い税から逃れようとする人が多く現れます。これは、直接税ではなく消費税などの間接税を上げることで解決することが出来ます。


しかし、消費税はみんな一律なので、所得が少ない人ほど負担が大きくなってしまいますよね。なんとも本末転倒な悪循環です。

さらに、貧困を解消する方法として就労の拡大ではなく社会保障による給付をメインにしています。つまり、給付による支出は増加する一方ですが、本当に貧しい低所得者にはその給付金が届きません。


低所得者に負担のかからない財源があればいいのですが、それができない以上、税や給付のシステムを見直す必要がありそうですね。


2025年問題と就職氷河期世代の関係

ワーキングプア(働いているが所得が少なく経済的に困窮する人々)も多い就職氷河期世代は、両親がちょうど団塊の世代かその一つ上の世代であることが多いんです。つまり、一番人口が多い世代の高齢者を、一番所得が少なく、人数もそう多くない世代の若者が支えなければならないということになりますよね。


親の収入に頼らなければ生活出来ない層も多いとされる就職氷河期世代には、本人の生活と親の介護を両立できるだけの高所得は見込めません。これが一世帯の中で起こってしまえば、老後親子破産は免れないでしょう。


高齢化にも少子化にも関わる人材不足問題

介護クライシス

 

後期高齢者の増加により、病院や介護施設の定員があふれることも予測できます。各種施設の数が足りないとなれば、その仕事を行わなければならない医療従事者や介護職員もこれまでより多く雇用しなければなりません。しかし、現実には医療従事者や介護職員の多忙・低所得などが問題になっており、離職率が上がるばかりです。そこへの対応にもお金が必要になるため、ぐるぐると堂々巡りをしているような状態になってしまっています。


問題を先送り?「国債」の不思議

そもそも、現代の日本では「高い社会保障水準」と「低い税金額」という相反する二つの条件を両立させることが前提となっています。では、今までどうやってつじつまを合わせて成立させてきたのでしょうか。

そこで現れるのが「国債」です。


国債は、国を整備するお金が税金だけでは足りない場合に、許可を取った人の資産を国が一時的に借金して使うというシステム。資産を貸す人は定期的に利息を受け取ることができ、満期になれば貸した分の全額が返ってきます。

国は借金を返すためにまた借金をする……という自転車操業をしているからこそ、今までは成立しているように見えていたんですね。


支出増への対応

国はこの支出増に対して、これまで国が負担していた分の医療費・介護費の自己負担額を上げることで資金を確保する「自己負担率の引き上げ」や、自宅に住みながら自宅を担保に入れて毎月お金を受けとることができる「リバースモーゲージ」などを推進しています。


収入減への対応

また、収入減に対しては、外国人労働者を迎え入れることによる人材補充や、立場や年功序列ではなく仕事内容によって賃金を定める「同一労働同一賃金」の導入など、これまでの働き方を根底から改革するようなものが多く提案されています。今後にいい影響をもたらすことが期待されますね。


まとめ

いかがでしたでしょうか。「高齢化による支出増」と「少子化による収入減」の、切っても切れない関係性がお分かりいただけたかと思います。日本の抱える問題の多くは昔から存在していましたが、見て見ぬふりを続けた結果、ついに表面化してきたといった所でしょうか。


2025年問題は他人事ではなく、確実に私たちの身に降りかかってくるということを理解しなければなりません。普段からアンテナを張って、自分を守る情報を逃さないことが必要になってくるでしょう。