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老人ホームの120年の歴史。日本初の老人ホームは女性限定だった

老人ホームの120年の歴史。日本初の老人ホームは女性限定だった

昔の老人ホームは生活保護者が入る施設だった?今では有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、様々な種類に分かれている高齢者施設ですが、社会保険制度が整う前は「養老院」や「養老施設」と呼ばれ、現在とは異なる機能を持っていました。


目次

  1. 戦後の老人ホームは仕事も収入もない貧困の生活保護者が集まる場所だった
  2. 養老施設は3施設に細分化「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」
  3. 「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」の違い
  4. 特別養護老人ホーム
  5. 養護老人ホーム
  6. 軽費老人ホーム
  7. 国土交通省や民間企業が高齢者向け住宅ビジネスに参入
  8. まとめ


日本で最初の老人ホームは、1895年にイギリス人の聖公会婦人伝道師であるエリザベス・ソーントンが東京港区の民家で始めた「聖ヒルダ養老院」だと言われています。

「養老院」と呼ばれ、老衰・疾病・貧困などによって生活ができない人を保護する施設として作られ、今から123年前の当時は女性の高齢者のみが入所できる施設でした。

その後、民間や宗教施設に留まっていた養老院が、国の制度上に位置付けられ、1950年に生活保護法が制定されたことを機に「養老院」という呼び名が「養老施設」に変更されました。


戦後の老人ホームは仕事も収入もない貧困の生活保護者が集まる場所だった

1950年に設置された「養老施設」ですが、今から約70年前の日本では、現在のように社会保険制度が整備されておらず、養老施設に入所する大半の人が、仕事がない(収入がない)高齢者で、つまりは貧困の生活保護対象者でした。


これは、介護してくれる家族がおらず、貯金もない高齢者が社会的弱者になってしまうこと危惧した救済措置とも言われていました。


養老施設は3施設に細分化「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」

1963年には社会保険制度の整備が進み「老人福祉法」が制定されました。

「老人福祉法」では、高齢者は長年、社会の進展に貢献してきたことを称え、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに,生きがいをもてる健全で安らかな生活を保障されるもの、とされています。


そのため、高齢者が心身の健康を保持しつつ、社会的活動に参加する機会も与えられることが基本理念に掲げられています。この老人福祉法の理念を実現させるために、養老施設は「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」へ細分化されました。


「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」の違い

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、中~重度の介護を必要とする高齢者が対象の介護施設です。

入所基準は「要介護3以上」で、サービス内容は身体介護を中心とした自立支援です。

月額費用の目安は8〜13万円程度です。


養護老人ホーム

一方で、養護老人ホームは介護の必要性に関係なく環境的・経済的に在宅で生活することが困難な高齢者を対象としています。

生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰させる施設として位置づけられており、入所基準は「自立した高齢者」となっています。

サービス内容は食事の提供や健康管理を含む自立支援です。


月額費用の目安はかからない場合もあれば、かかっても14万円程度です。


軽費老人ホーム

軽費老人ホームは、身寄りがない、または、家庭環境や経済状況などの理由により、家族との同居が困難な高齢者が比較的低額な料金で入居できる福祉施設です。

自治体の助成を受けることができ、入所条件などによってA型、B型、C型(ケアハウス)どれに入れるかは異なります。

サービス内容は食事の提供、その他日常生活上必要な便宜を供与することです。


月額費用は本人や扶養義務のある家族の世帯収入・課税状況の他、介護事業者、介護度によって異なり、月収34万円以上の所得がある方は原則対象外となる所得制限が設けられています。


国土交通省や民間企業が高齢者向け住宅ビジネスに参入

その後、高齢化が加速し、高齢者向け住宅の不足が露呈します。

その問題解決のため、1987年から国土交通省と民間企業が高齢者向け住宅ビジネスに参入しました。

国土交通省は高齢者に配慮された設計になった賃貸住宅「シルバーハウジング」の供給を開始し、一方で民間企業は、行政と連携し、各種高齢者向け住宅の供給を進めました。


民間企業が参入したことで、高齢者向け施設は一気に数を増やすことができましたが、民間であるがゆえの利益追求型のサービスにより、裕福な高齢者だけをターゲットにした、過剰なサービスを提供する高齢者施設の登場や、貧困層への粗悪な住宅の提供が問題になりました。

その後、運営主体が社会福祉法人や地方公共団体にゆだねられ、現在の形に至りました。


現在では、民間施設が運営するのは

・介護付き有料老人ホーム

・住宅型有料老人ホーム

・健康型有料老人ホーム

・サービス付き高齢者向け住宅

・グループホーム


公的施設としては

・特別養護老人ホーム

・介護老保健施設

・介護医療院

・ケアハウス


大きく分けて、このように分類されています。


まとめ

今回は「老人ホームの歴史」についてご紹介しましたが、いかがでしたか?

もっとも初期は貧困層に向けた女性限定の施設だった老人ホームの前身は、高所得者向けの施設にまで広がり、国や行政、民間までもが参入する大きな市場に変化しました。

今後、ますます増える高齢者に対して、どのように歴史が変わっていくのか、私たちはまだまだ変化に対応していく必要があると言えるでしょう。