少子高齢化が進む中、シニア世代の労働力活用はますます重要視されています。
そんな中で注目を集めているのが「高年齢者雇用安定法」です。
「65歳までの雇用って義務なの?」「2025年の改正で何が変わるの?」と疑問を抱えている企業担当者や現場の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、高年齢者雇用安定法の基本から、2025年の改正ポイント、注目すべき「第9条」、そして実際の現場に与える影響までをわかりやすく・簡潔に解説します。
法改正の動向を正しく理解し、スムーズな対応に備えましょう。
【 目 次 】
- 高年齢者雇用安定法とは?
─ 基本概要と65歳雇用義務の関係
- 2025年改正のポイントと「第9条」の注目点
- 改正による企業と現場への影響とは?
- まとめ|法改正への備えと今後の対応策
高年齢者雇用安定法とは?
─ 基本概要と65歳雇用義務の関係
高年齢者雇用安定法(正式名称:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)は、少子高齢化に対応し、意欲と能力のある高年齢者が就労を継続できる環境を整えることを目的とした法律です。
この法律により、企業には「定年後も一定年齢まで雇用を確保する義務」が課されています。現行制度では、原則として65歳までの雇用確保措置を講じる必要があり、具体的には以下のいずれかを実施することが求められています。
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年の廃止
- 継続雇用制度の導入(再雇用など)
この「雇用確保措置」は、従業員本人が希望すれば原則全員に適用されなければならず、企業の選別的な対応は原則認められていません(一定の例外規定はあります)。
そのため、企業としては単に「制度を整える」だけでなく、実際に高年齢者が働き続けやすい職場環境をどう作るかが大きな課題となっています。
2025年改正のポイントと「第9条」の注目点
2025年に向けて、高年齢者雇用安定法はさらなる改正が予定されており、その中でも特に注目されているのが「第9条」の内容です。
● 第9条とは?
第9条は、企業が高年齢者の雇用を確保するために講じるべき措置について定めた条文です。具体的には、以下のような雇用確保措置の義務が規定されています。
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年の廃止
- 継続雇用制度の導入(再雇用など)
この条文は、企業が原則として希望者全員を65歳まで継続雇用する責任を明確に示したものです。
● 2025年の改正ポイント
今回の改正では、第9条の枠組みは維持されつつ、以下のような変更や強化が議論・検討されています。
- 継続雇用制度の柔軟性見直し:より多様な働き方に対応できる制度設計へ
- 企業規模に応じた段階的な適用:中小企業にも無理のない移行措置が盛り込まれる可能性
- 70歳までの努力義務の具体化:現在努力義務となっている70歳までの就業確保について、さらなる推進策が盛り込まれる見通し
これらの改正は、企業にとって新たな対応を求められる一方で、高年齢者が自分に合った働き方を選べる可能性が広がるという意味でも重要です。
法改正が正式に施行される前に、自社の制度を見直し、必要な準備を進めておくことが求められます。
改正による企業と現場への影響とは?
2025年の高年齢者雇用安定法の改正は、企業にとって制度面・人事面の両方に大きな影響をもたらすことが予想されます。
● 制度対応の負担が増加
まず、法律改正によって65歳以降の雇用確保がより厳格に求められることで、企業は就業規則や継続雇用制度の見直しを迫られます。
とくに中小企業では、
- 人事制度が年功序列型で高齢社員の処遇が硬直化している
- 働き方に多様性がなく再雇用後の受け入れ先が限られている
といった課題が顕在化しやすく、制度の再構築と運用の柔軟性が鍵となります。
● 人材配置・評価制度への影響
継続雇用が進むことで、現場では
- 若手との役割分担やバランス調整
- 高年齢者のモチベーション管理
- 貢献度に応じた公正な評価制度の整備
といった人材マネジメント面の課題が生じます。
特に、70歳までの就業確保が努力義務とされている現状では、従来の評価制度では対応しきれず、パフォーマンスベースの評価設計や役割型雇用への移行を検討する企業も増えています。
● プラスの側面も
一方で、シニア層の知識・経験を活かせる環境を整えることは、
- 技術継承の促進
- 人手不足の補完
- 多様な人材活用による組織の活性化
といった企業の持続可能性を高めるチャンスにもつながります。
単なる義務対応として捉えるのではなく、「戦力としての高年齢者活用」という視点で制度設計を行うことが、企業の未来につながります。
まとめ|法改正への備えと今後の対応策
高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保を企業に義務づける重要な法律です。
2025年の改正では、「第9条」の枠組み強化や、70歳までの就業確保の具体化が進む可能性があり、企業にはこれまで以上に実効性のある制度運用が求められるようになります。
現場レベルでも、高年齢者の働き方に対する柔軟な姿勢と、評価・配置・育成といった人材マネジメントの見直しが欠かせません。
今後に備えて企業が取り組むべき主なポイントは以下のとおりです。
- 自社の就業規則・継続雇用制度の現状把握と見直し
- 年齢に応じた職務設計や評価制度の整備
- シニア人材のモチベーションを高める職場環境の構築
- 改正内容の情報収集と社内共有
法改正は「義務」だけでなく、人材活用の幅を広げる「機会」にもなります。
単なる対応にとどまらず、高年齢者の力を企業の成長力として活かす視点を持つことが、今後ますます重要になっていくでしょう。