スウェーデンは、「北欧のキレイな国」「幸福度ランキングの常連の国」など、さまざまなイメージを持っている方がいらっしゃると思いますが、スウェーデンは高福祉国家としても有名な国。“介護”のイメージである“寝たきりの状態”になる方もほとんどいないとされています。
今回は高福祉国家であるスウェーデンの介護について、ご紹介します。
目次
- 【1】スウェーデンは社会保障制度が充実した国
- 【2】高齢化社会を迎えた日本とスウェーデン。違いは?
- 【3】社会福祉はコミューンが提供
- 【4】老後も自宅で生活している人がほとんど!
- 【5】高齢者の介護を国が積極的にサポート
スウェーデンは社会保障制度が充実した国
高齢化社会の先進国であるスウェーデンでは、“高齢者ができるだけ積極的な生活を営み、自らの自立性を維持する”ことを目標に、高齢者ケアの内容も医療から福祉へとシフトチェンジ。現在では高福祉国家としても知られています。
日本の消費税が10%なのに対して、スウェーデンの消費税は25%。所得税が30%であることを考慮すると、所得の半分以上が税金としてひかれている状態ですが、税金が高い分、18歳以下の医療費は無料で、それ以上の年齢の方も年間で最大1万円程度の自己負担で過ごすことができるほど。
また、子ども1人に対して、夫婦合わせて最大480日まで育児休暇を取得することができ、その間の育児休暇手当も給与の最大80%が支給されるなど、手厚い保障が特徴の国となっています。
高齢化社会を迎えた日本とスウェーデン。違いは?
スウェーデンは、世界の中でもいち早く、1972年に高齢者社会を迎えた高齢者ケアの先進国。一方で、日本も高齢化社会を迎えていることは誰でも知っていることですよね。
そんな日本とスウェーデンの違いはどこにあるのでしょうか?
まずは、高齢化率を見ていきましょう。
なぜ日本は高齢化が急速に進んだのか、について、見てみましょう。日本における1935年の高齢化率は4.7%。その後、1970年に7%を、24年後の1994年に24%を超えています。1950年から1975年はどんな年かというと、出生率が低い年であったようです。その結果、総人口に占める高齢者の割合が増えるということが起こりました。1975年以降は、医療の進化によって死亡率が改善し、平均寿命が延びたことによって高齢化が進み、2017年には27.4%と世界でも第1位の高齢化社会となっています。
社会福祉はコミューンが提供
高福祉国家であるスウェーデンでは、“高齢者ができるだけ長く自宅で生活できる”ということを目標に、日本の市町村にあたる“コミューン”がさまざまなサービスやヘルスケアを提供しています。
日本では介護認定の区分が決まっていて、認定を受けることでその要介護度に応じたサービスを受けることができますが、スウェーデンでは本人や家族の申請によって、各コミューンの判定員が要介護度やサービスの内容等を決定しています。
各コミューンによって、判定の基準等は異なっているため、住んでいる場所によって、判定は異なるようです。
コミューンは、高齢者が自宅で生活を続けるために必要な自宅の改造を行ったり、ホームヘルプサービスやデイサービス等の在宅介護サービスを提供していますが、そのサービスにかかる費用は、コミューンの税財源と個人の自己負担で賄われています。自己負担の金額はコミューンによって異なり、サービスを受ける人の所得に応じて最低所得保障額や負担額の上限が設けられています。
老後も自宅で生活している人がほとんど!
日本で老後の生活を送る場所として“自宅”よりも“病院”や“高齢者施設”をイメージする方が多いのではないでしょうか?
スウェーデンでは、老後も自宅で生活している方がほどんど。“自立した生活を送る”という国民性が現れている部分だとも言われていますが、施設で生活している高齢者の割合は、約5%程度とされています。
なぜ施設ではなく自宅で生活が続けられるのかというと、住んでいたコミュニティで、安心して生活ができるように、介護サービスを受けられる環境が整っているため。
自宅で生活している高齢者が体調を崩した場合も、家族だけで介護をするのではなく、コミューンが対応してくれるという現状があるんです。
スウェーデンには、高齢者ケアとしてどのようなサービスがあるのか、いくつかご紹介していきます。
ホームヘルプサービス
ホームヘルプサービスとは、朝7時半から午後5時頃までの時間帯に、心や身体の機能低下に伴って、自立した生活を送ることが難しくなった方に対して提供されるサービスのこと。ホームヘルパーが訪問し、掃除や洗濯・食事の用意や買い物など、家事のサポートや、朝の離床の介助や入浴・排泄等のケア、薬の管理や医師や看護師とのコンタクトなどを行います。
ストックホルムではホームヘルプサービスを提供している事業所が約100か所に上り、利用する高齢者が自分で選ぶことが可能となっています。
デイケアサービス
デイケアでは、社会サービス法や保健医療サービス法に基づいて、提供されているもの。主に4つに分けることができます。
1つ目は健康な高齢者向けのもの。認定等は必要なく、サービスハウスに併設又は高齢者団体などが運営しているものとなっています。
2つ目は、認知症の高齢者を対象としたもの。介護ニーズ認定者が認定することによって、参加することができるとされています。食事や散歩・読書といった活動を行っています。
3つ目は、身体的疾患のある高齢者を対象としたもの。これも、介護ニーズ認定者が認定することによって、参加することができます。
4つ目は、病院から退院する高齢者を対象としたもの。リハビリ計画等が立てられ、実施されています。
ショートステイ
ショートステイは、治療や介護・リハビリテーションを目的に、“特別な住宅”に一時的に滞在することをいいます。家族の介護負担を軽減することが目的とされ、病院を退院した後や、特別な住宅に入居するのを待っている際などに入所します。滞在の上限は設けられていないため、利用期間はさまざま。特別な住宅に住んでいる方で、リハビリが必要な場合もショートステイを利用する場合があります。
認知症の高齢者を対象としたショートステイでは、認定を必要としない等、緊急的に行われることもあります。
ナイトパトロール
ナイトパトロールは、夕方から朝にかけて、食事や就寝のサポートを提供するもの。ヘルパーや准看護師といった職種の人が介護が必要な方の家を回ったり、緊急の呼び出しに対応したりします。
特別な住居(介護施設)
特別な住居とは、サービスハウスや老人ホーム、グループホームやナーシングホームなど、高齢者の療養型施設のこと。1992年に行われたエーデル改革によって、介護度に応じて施設を変わる必要がなく、できるだけ在宅に近い環境で住み続けられるようにされました。
賃貸法の対象で、住宅手当の支給対象となっていますが、24時間介護職員が常駐しています。
入居するためには、認定調査員が在宅での生活が難しいと認定することが必要。自宅での生活が難しくなってきた場合、まずは住宅の改修やエレベーター付きの住宅への引っ越しなどで対応して出来るだけ自宅で過ごすようになっているため、特別な住宅での居住期間は短いのが特徴となっています。ちなみに、スウェーデンでは、自宅で生活するために住宅を改修する場合、かかる費用は自治体が負担するなど、金銭的なサポートを受けることができます。
高齢者の介護を国が積極的にサポート
スウェーデンでは、コミューンの認定調査員が在宅での生活が難しいと認定するまでは、在宅での生活が基本。
住宅改修など、必要なサービスにかかる費用は国や自治体が負担し、訪問看護やホームヘルプサービスなどを利用しながら自宅で生活しています。
自立した生活を送ることを目標に、それぞれのニーズを取り入れた介護プランを作成するなど、高齢者の意思も尊重されているスウェーデンの介護事情。寝たきりになる高齢者が少ないことを考慮し、日本における介護の参考にしていきたいですね。