介護士不足は深刻といつも叫ばれているのに、介護士不足の原因と考えられる給料が低い問題はいつまで立っても解決されません。処遇改善がなされても、わずかばかりに過ぎず、人材不足に歯止めがかからないのが現状で、どうして介護士の給料が上がらないのか、その根本原因を見ていきましょう。
目次
- 【1】今後、介護士の給料は上がるの?
- 【2】給料面で介護士のメリットとは?
- 【3】事業所ができる給料アップの方法とは!?
- 【4】介護報酬はいつまで経っても低いまま!?
今後、介護士の給料は上がるの?
結論から言うと、今後も介護報酬が引き上げられる可能性は低いと見られています。それでも高齢化は進み、介護士不足も進んでいきます。介護士需要が増えれば、需要に応じて、給料も上がりそうなものですが、実態はどうなのでしょうか。
現在、介護士の給料に対して公的な補助のような対策が実施されています。その最たるものが「処遇改善加算」です。処遇改善加算とは、介護職員の給料を上げるために設けられた制度です。この制度は、平成21年度に創設された「介護職員処遇改善交付金」が始まりであり、平成24年度から新たに介護報酬に加えられたのが処遇改善加算です。
加えて、平成27年度の介護報酬改定においては、雇用管理の改善や労働環境の改善の取り組みを実施する事業所を対象に、さらに月額平均1.2万円相当を上乗せ評価する加算区分が創設されています。介護報酬の引き上げに頼らずとも、介護士の雇用促進(職場定着率の向上、離職率の改善)を目的に、加算が実施されています。
この施策でこの4年間で、約2万円も給料が上がっています。
しかし、問題はこのような公的補助にも限りがあるということです。補助は国の財源から支出されるため、支出は国の財政圧迫を意味します。そのため、公的補助にも上限は存在し、いつまでも上がり続けるはずはないと見られています。つまり、一時的な対応に過ぎないということです。こうしたことからも、介護士の給料に対して今以上の公的補助が行われる可能性は低いといえそうです。
給料面で介護士のメリットとは?
勤務する施設により異なってきますが、介護士は給料面での昇給があまり期待できないということは少なからず実態としてあります。
しかし、介護業界で働く上ではメリットも存在します。それは施設経営が景気にそこまで左右されないということです。
なぜなら、施設の収入が介護報酬によるからです。高齢化のため介護施設の需要が高く、介護報酬を安定的に受け取ることができます。
一般企業の場合、基本的には公的補助などありませんから、不景気ならば売り上げが激減する可能性があります。そういったことに施設は左右されにくいので、介護士として安定して生活することができます。
もちろん、施設も経営状況が良い施設が生き残り、経営がうまくいかない施設は閉鎖を余儀なくされます。介護報酬という公金から収入を得られるということは大きく、不況にありがちなリストラなども気にせず安心して仕事をすることが可能です。
人材不足というところから、転職もしやすいですし、待遇アップを狙っての転職も他業界に比べるとしやすいです。
事業所ができる給料アップの方法とは!?
介護の仕事は、事業所コストとしては「人件費」が一番に占めています。施設介護では介護報酬の6~7割、訪問介護では9割ほどが人件費と言われています。「介護報酬」は売上が決まってしまう公定価格のため、事業所の収入には上限があります。
介護事業所の最も大きな収入を占める介護報酬は「公定価格」で決まっています。公定価格は、国の経済を統制するために国により決められた価格のことです。これにより、介護事業所は、国が定めた介護報酬でしか請求することができませんし、全てのサービスの価格はあらかじめ決められています。
福祉業界外を見てみると、会社の商品の値段は、会社により異なり、それを自由に決めることが可能です。
つまり、「介護報酬が収入源となる介護事業は、利用者に請求できる額に制限があるということです。それにより、どれだけ創意工夫し、売り上げ増に励んでも、売上の上限が決まっているのです。そういった理由で、介護事業所が人件費につかうお金の限りが出てきます。
事業所としてサービスをどれだけ効率よく提供できるかが重要となります。また、大きいグループ施設ですと、給料が高めに設定されている場合があります。
それは、運営施設の福祉用品を一括購入するなどの安い備品調達や、効率的な運営で介護士の給料増分を捻出しているためです。このように介護報酬が上がらない現状を見れば、事業所として経費削減、効率的運営に努め、介護士の給料を上げる取り組みは必須と言えます。
介護報酬はいつまで経っても低いまま!?
介護報酬は医療報酬と比べると、かなり低めに設定されている事実があります。これには、介護保険制度が生まれた理由に関係があります。
介護保険制度は、高齢者数の増加に伴い、医療費が増加し、国の財政を圧迫してきたため、支出削減目的で生まれたものです。
つまり、介護報酬は医療費による財源圧迫を回避するために生まれました。それにより、介護報酬は価格が抑えられているのです。介護報酬を高くすると、医療費に代わり、介護費が国の財政を圧迫するため、本来の目的から外れてしまいます。このように介護報酬が低いままであるため、介護士の給料も低いままであるというわけです。これは介護士の給料が低い理由の一つです。
また、最初から低価格の介護報酬は時間の経過と共にさらに低下しています。介護報酬は3年毎に見直されますが、2003年改定は、「マイナス2.3%」、2006改定はさらに「マイナス2.4%」の引き下げが行われました。
2009年と2012年には、主なところでは、介護職員の処遇改善のためプラス改定でしたが、2015年は「マイナス2.27%」の引き下げでした。この数値に関しては、処遇改善と介護サービスの充実分プラスを除くと、マイナス4.48%となります。
そして、65歳以上の高齢者の数は、2025年には「3,657万人」となり、2042年に3,878万人を迎えると予測されています。この高齢者数の増加をみると、今後は介護保険サービスの利用者がさらに増加します。
このままいけば、介護費が財政を圧迫すること必須です。そうならないために国は介護報酬の引き下げを行ない、介護費による財政圧迫を回避しようとしているのです。そのため、今後も介護報酬を引き下げていく可能性があります。つまり、「介護報酬は公定価格のため上限がある」「介護報酬自体が低く設定されている」「介護報酬が下がっている」という事情があるため、介護士の給料は安くなっているのです。
まとめ
見てきた通り、介護士の給料が上がらないのは明確な理由があり、国の財源から支払われている給料であるため、上がりにくいといえます。
それは今後も傾向として続きます。介護士の給料は低めに設定されている一方で、給料が良い施設もあります。給料に満足できない状況なら、転職も視野の一つとして必須といえます。介護人材は不足していますし、施設としては事業拡大のためにのどから手が出るほど、介護士を必要としています。事業所の努力で給料を高めに設定している場合もあるので、転職求人も検討してみることをおすすめします。