加齢に伴う口腔機能の低下を指し、食べこぼしや滑舌の悪化、嚥下(えんげ)障害などが現れる状態がオーラルフレイルです。
これが進行すると、食事や会話が困難になり、栄養不足や社会的孤立につながり、全身のフレイル(虚弱)へと発展するリスクがあります。
定期的な口腔ケアや咀嚼(そしゃく)運動の維持、健康寿命を延ばし生活の質を向上させるために早期の予防や適切なケアが重要です。
今回はオーラルフレイルについて詳しく解説していきます。
目次
オーラルフレイルとは
リスクと対処法
3学会が新たに定義
オーラルフレイルとは
口の機能が低下した状態を指す言葉で口の虚弱とも呼ばれています。
オーラルフレイルは、老化に伴う口腔の状態の変化や口腔健康への関心の低下、心身の予備能力低下などが重なり合って起こります。口の機能が低下すると、食べ物の選択肢が減り、栄養に偏りが生じたり、心身の機能低下につながったりする可能性があります。
■主なオーラルフレイルの症状
言語障害:発音が不明瞭になり、コミュニケーションが困難になる。
嚥下障害:食べ物や飲み物を飲み込むのが難しくなる。
口腔乾燥:唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥する。
歯の健康問題:虫歯や歯周病のリスクが増加する。
食事の制限:固形食を避けるようになり、栄養不足につながる。
咀嚼力の低下:食べ物を噛む力が弱くなる。
これらの症状は高齢者に多く見られますが、早期に対策を講じることで改善が期待できます。
定期的な口腔ケアや医療機関でのチェックが重要です。
リスクと対処法
ではオーラルフレイルになった場合どのようなリスクがあるのでしょうか。
1、栄養不足
嚥下や咀嚼の機能低下により、固形食を摂取しづらくなり、結果的に栄養不足に陥るリスクがあります。
2、感染症のリスク増加
口腔内の衛生状態が悪化し、虫歯や歯周病のリスクが高まり、結果的に全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
3、QOLの低下
食事やコミュニケーションが困難になることで、社会的な孤立感や抑うつ症状が進行する可能性があります。
これがさらに口腔機能の低下を招く悪循環になることも少なくありません。
4、認知機能の低下
口腔機能の低下は食事やコミュニケーションに影響し、脳への刺激が減少することで認知機能にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
リスクを理解したうえでオーラルフレイルにならないためにどのような対処法があるのでしょうか。
1、定期的な口腔ケア
基本的なことですが、毎日の歯磨きや口腔内の清掃を徹底することで口腔衛生を維持します。定期的な歯科受診も重要です。
2、栄養管理
栄養士の指導を受けて、栄養バランスの良い食事を心がけます。消化機能低下時は、柔らかい食材や高栄養食を取り入れることがよいでしょう。
3、リハビリテーション
嚥下訓練や口腔機能のリハビリを行うことで、口腔機能の改善を目指します。
4、義歯の適切な使用
自分に合った最適な義歯を使うことで、快適な食事ができるようなります。
オーラルフレイルに対する意識を高め早期の対策を講じることで、健康的な生活を維持することが可能です。
3学会が新たに定義
日本老年医学会、日本老年歯科学会、日本サルコペニア・フレイル学会は2024年、「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を発表しました。
これはオーラルフレイルの定義や概念をまとめたもので、専門職以外でも使えるオーラルフレイルのチェック方法も開発しています。
早期の口腔機能維持・改善へ活用を呼びかけることが目的とされています。
具体的にはオーラルフレイルを「歯の喪失や食べること、話すことに代表されるさまざまな機能の『軽微な衰え』が重複し、口の機能低下の危険性が増加しているが、改善も可能な状態」と改めて定義してます。
見過ごしてしまうと最終的に全身のフレイルや筋肉減弱(サルコペニア)、低栄養のリスクを高めることから、早期発見・対策が重要だとしています。