訪問介護は同一建物減算の適用の有無で事業所の経営状況に差があり、同一建物減算の適用がある訪問介護は経営状況が良い傾向にあります。
適用することで効率的なサービス提供が可能が出来るようになり、減算があっても経営にプラスの影響を与える場合があります。
また、ご利用者さまとの接点も増え満足度や信頼の向上にも寄与するメリットにも繋げられます。
今回は、その同一建物減算について詳しく解説していきます。
目次
そもそも同一建物減算とは
同一建物減算ありの事業所が経営状態が良い
2024年の介護報酬改定で、見直しになった内容
そもそも同一建物減算とは
同一敷地内建物等とは、「事業所と構造上または外形上、一体的な建築物」、及び「同一敷地内、隣接する敷地にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能な建物」を指します。
要するに同じ建物の別のフロアに事業所がある場合や渡り廊下などで繋がっている建物、同一敷地内の別棟の建物、幅員の狭い道路を挟んで隣接する場合などが該当します。
事業所と同じ建物に住んでいるご利用者さまに対して、ケアサービスを提供する場合に単位数が減算される評価項目です。
一般的な訪問介護サービスでは、事業所から訪問介護員がご利用者さまの自宅を訪ねるため、移動時間や労力がかかります。
一方、事業所とご利用者さまが住んでいる建物が同じであれば、訪問介護員が移動に費やす時間や労力を削減することが可能です。
そのため同一建物で行う訪問介護サービスは、介護報酬が減算されます。
同一建物減算ありの事業所が経営状態が良い
同一建物減算は介護保険給付の公平性を確保する目的で設けられており、サービス提供の効率化を勘案して適正化を図っています。
訪問介護の2022年度の経営状況を明らかにする福祉医療機構(WAM)の調査レポートによると全体の42.8%の事業所が赤字だったと報告されましたが、この同一建物減算の適用の有無で事業所の経営状況に違いがあることがわかりました。
赤字事業所の割合をみると、減算なしが35.2%、減算ありが22.1%。減算ありの方が13.1ポイント低くく、特にサービスの提供回数に大きな差があります。
減算ありの事業所は減算なしの事業所より、1カ月あたりの提供回数やご利用者さま1人あたりの提供回数が2倍以上多い結果となりました。
これでわかることは、減算ありの事業所は収入単価が低いものの、特定事業所加算の算定割合は相対的に高いということです。
減算ありの事業所の事業収入は、減算なしの事業所の2.2倍となっているのです。
2024年の介護報酬改定で、見直しになった内容
上記で説明してきた通り、減算があっても相対的に特定事業所加算の算定割合が高い傾向があるのは、単価の低いサービスを数多く実施するところが多いことがわかりました。
そのため厚生労働省は2024年度の介護報酬改定で、給付費の適正化に向けて訪問介護の同一建物減算を拡充しました。
訪問介護サービスの同一建物減算は、2024年の法改正により算定要件が次のように見直されました。
①10%減算:事業所と同じ敷地内や隣接する敷地内にある建物に住んでいる利用者(②および④に該当する場合を除く)
②15%減算:同一建物に住んでいる利用者数が1カ月につき50人以上いる
③10%減算:上記①以外の範囲にある建物内に利用者が20人以上住んでいる場合
④12%減算:正当な理由なく、6カ月間に提供した訪問介護サービスのうち、90%以上が同一建物でサービス提供が行われていた場合(②に該当する場合を除く)
2024年の法改正によって「④12%減算」が新設されています。
事業所が提供するサービスのうち90%以上が同一建物で行われている場合は、同一建物減算で介護報酬が12%減算されるよう改正されました。