2022年度の調査によると訪問介護事業所の42.8%が赤字経営に陥っており、2021年度の40.1%から増加しています。
基本報酬の引き下げや物価高騰が主な原因とされており、訪問介護の事業運営が厳しい状況に直面しています。
さらに、赤字事業所の増加が地域のサービス提供体制に悪影響を与える可能性があります。
訪問介護の約半数が赤字事業所とされているさまざまな背景について解説していきましょう。
目次
訪問介護全体の43%が赤字の背景
経営が厳しい理由とは
2024年介護報酬の改定で基本料引き下げに
訪問介護全体の43%が赤字の背景
福祉医療機構(WAM)は2024年8月、介護保険の訪問介護の経営状況を明らかにする調査レポートを公表しました。
その調査レポートによると2022年度の赤字事業所の割合は42.8%。2021年度の40.1%から更に2.7ポイント悪化したことがわかりました。
訪問介護の事業運営の厳しさが改めて浮き彫りになった形になります。
背景として大きく、2023年度の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられた経緯があります。
福祉医療機構(WAM)はレポートで改定に触れ、「経営への打撃が懸念される」と指摘しており、
国は処遇改善加算の拡充、特定事業所加算や認知症専門ケア加算の見直し、口腔連携強化加算の新設といった施策も併せて講じてきました。
ただ、どこまで活かされるかはまだ不透明な部分が多いのが現状です。
また訪問介護は足元で事業者の倒産件数も増えており、このままでは地域のサービス提供体制の綻びが一段と深刻化する、と心配する声が出ています。
2022年度は物価高騰などで経費率が前年度から1.3ポイント上昇しており、赤字事業所が増えた要因の1つとなったと考えられています。
経営が厳しい理由とは
東京商工リサーチの「訪問介護事業者の倒産動向調査」によると訪問介護事業所の倒産件数は、2022年で50件と報告されています。
そして2023年1~8月の同報告書「訪問介護事業者の倒産動向調査」の結果によると、倒産件数は44件で前年同期の約1.5倍となっており過去最大の倒産件数だった2019年の58件を大幅に上回ると考えられています。
「訪問介護事業者の倒産動向調査」によると、2023年1~8月に倒産した訪問介護事業所44件のうち、「コロナによる倒産」は17件、「人手不足による倒産」は9件と、前年同期と比べてそれぞれ大幅に増加した結果となっています。
水道光熱費等の物価高だけでなく訪問介護員の高齢化等による人手不足や新型コロナウイルス感染症に関連する支援が終了したことなどによる影響で、訪問介護事業所の倒産が増えていることが推察されます。
2024年介護報酬の改定で基本料引き下げに
この訪問介護の経営状況と切っても切り離せない問題が介護報酬改定についてです。
2024年1月22日におこなわれた第239回社会保障審議会・介護給付費分科会にて、令和6年度の介護報酬改定に関する事項が明らかになりました。
特に注目を集めたのは訪問介護サービスにおける基本報酬が引き下げになるという点で、訪問介護の基本報酬が2~3%引き下げられました。
理由として厚労省は「訪問介護は、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保している」と、ほかの介護サービスと比べて十分な黒字を確保していると判断されました。
しかし改めて訪問介護事業所の利益率の分布状況を集計したところ、赤字の事業所は、全体の36.7%あることがわかったのです。
訪問介護の基本報酬が引き下げられると、事業の維持・管理に費やす費用が減るので小規模の訪問介護事業者は事業を続けられない可能性もあります。
また、「報酬が少ないので介護スタッフを雇えない」「給料が少ないので転職したい」などの理由で介護スタッフが減少することもあるのです。
訪問介護の基本報酬を引き下げるというニュースは、以前より訪問介護を利用していた人や、その家族にとっても不安なニュースです。
引き続き注目していきましょう。