2024年政府は福祉用具の選定の判断基準を見直しを実施し、「移動用リフト」「体位変換器」「介助用ベルト」などが新たな選定基準として追加しました。
ご利用者さまの状態や介護環境に応じた適正な選定を促すため、真に必要な人に適切な支援を行うことを目的とし福祉用具を使用する際の適切な基準を明確にしました。
今回は福祉用具の選定の判断基準の背景について解説していきます。
目次
福祉用具の判断基準とは
見直しの背景
判断基準の見直し内容とは
福祉用具の判断基準とは
まず、福祉用具について説明します。
福祉用具とは心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者、または要支援者が以下の目的のために使用します。
・日常生活上の便宜を図るための用具
・機能訓練のための用具
・日常生活の自立を助けるための用具
また、「福祉用具の選定の判断基準」はご利用者さまの状態と合わないものが提供されて本人の自立支援を阻害するケースを防ぐことを目的とするものです。
介護保険における福祉用具の選択は、以下のようにいくつかの基準に基づいて行われます。
・福祉用具利用者の身体的および精神的状態: 福祉用具はご利用者さまの能力とニーズに合っているか
・家庭環境: 住居環境、生活状況に合っているか
・安全性と快適性: 安全性、快適性がそのご利用者さまの能力に合っているか
・介護保険の適用範囲と自己負担分が出た場合、そのご利用者さまの金銭的状況に合っているか
これらの要素により、福祉用具の使用について判断されます。
見直しの背景
見直しをされることとなった「福祉用具の選定の判断基準」の例を紹介します。
個々の福祉用具ごとに、「使用が想定しにくい状態」「使用が想定しにくい要介護度」を提示しています。
例えば自走用車いすの場合、以下のようにまとめられています。
《例:自走用車いす》
・使用が想定しにくい状態=つかまらないで歩行できる
・使用が想定しにくい要介護度=要支援
※ あくまで標準的な目安です。ご利用者さまの生活環境や解決すべき課題などによっては、使用が考えられるケースもあります。
上記のように厚労省の作成した「福祉用具の選定の判断基準」は、およそ4,500もの利用事例を検証した結果に基づき、今から18年前の2004年に策定されました。
現在、介護保険の福祉用具の利用状況をみると、要介護者等の日常生活を支える道具として普及・定着しています。
その一方で要介護度の軽い者に対する特殊寝台、車いすの貸与など、ご利用者さまの状態像からその必要性が想定しにくい福祉用具が給付されるなど、
介護保険法の理念である自立支援の趣旨に沿わない事例も見受けられていました。
判断基準の見直し内容とは
厚労省は2022年9月にまとめた検討会の報告書の中で、以下の観点から見直す方針を打ち出していました。
・ 新たに給付対象となった福祉用具に関する記載の追加
・ 福祉用具を選定する妥当性の判断に役立つ情報の充実
・ 多職種協働の促進
その後、福祉用具の利用実態を把握する調査や有識者との協議などを重ねてきました。
この判定基準の見直しにおけるガイドラインでは、ご利用者さまの心身の状態、介護能力、生活環境に基づいた個別の選択を強調しています。
具体的には新たな「福祉用具の選定の判断基準」の積極的な活用をケアマネジャーたちに要請しました。
・福祉用具はその特性とご利用者さまの心身の状況とが適応した選定が重要。支援の手段の1つとして福祉用具の活用をケアプランに位置付けること
・福祉用具専門相談員をはじめ医師、看護師、作業療法士、ヘルパー等福祉用具に関わる専門職は、この判断基準に示された「留意点」や「参考情報」を参照しつつ、サービス担当者会議やその他の機会を通じて、利用者の状態像やその変化、介護者の介護力、居住環境などを十分に踏まえ、福祉用具が適切に選定され、かつ、安全に使用されるよう、ケアマネジャーに対して専門的な見地から助言やサービス提供を行うこと