訪問介護事業所の数は5年連続で増加しており、在宅介護が推奨される日本においては喜ばしいニュースと話題になっています。
一方で今後の展望と課題がいくつか指摘されているようです。
急速な高齢化の進展に伴う訪問介護のニーズはさらに増加が見込まれているなかで、特に人手不足が大きな課題となっています。
そして事業所数が増えているのに対し1事業所あたりのスタッフ数が減少傾向にあるなど、今後は人材確保と質の向上が重要になってきています。
今回は訪問介護事業所が5年連続で増加していく背景について詳しく解説していきましょう。
目次
訪問介護事業所が5年連続で増加
増加の背景とは
今後の課題とまとめ
訪問介護事業所が5年連続で増加
2024年7月、厚生労働省から訪問介護事業所数について発表がありました。
介護保険の訪問介護の事業所数が過去最多を更新したのです。
2024年4月審査分で全国に3万5468件の介護事業所数がありますが、前年同期より1.2%、418件多い結果となり増加は5年連続となります。
2020年代に入ってから、微増傾向トレンドが続いており、訪問介護事業所数の増加とともに利用者数や給付費も伸びています。
一方でホームヘルパーの不足は極めて深刻な状況です。
有効求人倍率は15倍を超えており、加齢を理由に一線を退く人も後を絶ちません。
全体数としては増加しているもののヘルパー不足が要因で休廃業、解散、倒産に至る事業所も増えています。
増加の背景とは
日本における急速な高齢化がこの訪問介護事業所増加の背景にあると言われています。
具体的に言うと2つの特徴があります。
1つ目は、高齢者数・要介護者数の増加にともなう訪問介護へのニーズ増大。
2つ目は、当面の安定的な市場を狙った法人の新設、つまりサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームに併設されることで増えていることです。
厚生労働省の「介護給付費実態統計」によると、訪問介護の年間実受給者数は、2018年度から2021年度の4年間だけでも7万人以上も増えています。
訪問介護のご利用者さまと事業所数の間には相関関係があり、利用者数・事業所数は共に増え続けています。
サ高住や住宅型有料老人ホームでは、介護サービスは施設側によっては直接提供されません。
食事・入浴・排泄の介助などのケアを受けるには、自宅の場合と同じく、訪問介護などの在宅向けサービスを利用する必要があります。
そして多くの施設では、契約・利用がしやすいように、同じ建物内に訪問介護事業所を併設しています。
こういった施設は年々施設数は増えており、それに合わせて併設型の訪問介護事業所も増加しているのです。
今後の課題とまとめ
人材不足、つまりホームヘルパーの不足は極めて深刻な状況です。
事業所数は増えていても1事業所あたりで働く人の数は維持されず、減っている実情が見て取れます。
人員数が事業所数増に合わせて増えていないのが実態なのです。
ITC・デジタル化が進み業務効率化が進んでいるとはいえそれを実感できるほどの人材的な余裕はなく、1事業所あたりの運営力やサービス提供力は低下しているとも考えられます。
また今後高齢化が進む中、訪問介護へのニーズは今後もさらに増加していくのは確実です。
そのため今後も人材確保に向けた取り組みが最も重要な課題となるでしょう。
特に全国的に取り組みが進められている「地域包括ケアシステム」では、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域社会づくりが目指され、その中で訪問介護は「介護」の分野で中心的な役割が求められています。
若い世代が訪問介護で働きたいと思えるような環境・体制作りに、行政が本腰を挙げて取り組む必要があるでしょう。