介護士不足が深刻化している状況はいまも変わらず、さらにここ10年間で急激に悪化しています。
現在では事業所の約8割が介護士不足に直面していると言われているのです。
この状況が続くと介護サービスの質が低下し、ご利用者さまへの影響が懸念されます。
また、在宅介護や介護施設の負担が増大することにより、さらなる人手不足の悪循環に陥る可能性もあります。
この問題の背景にはどのような要因がみられるのか解説していきましょう。
目次
介護士が人材不足の背景とは
介護士不足に対する政府の対策
最新の調査結果とは
介護士が人材不足の背景とは
■人材不足の現状
日本では、介護士の不足が深刻な問題となっています。
厚生労働省の推計によると、2025年には約38万人の介護士が不足するとされています。
さらに、高齢化が進むにつれてその不足状況はますます深刻になると予測されます。
介護業界における人材の課題はこうした「数」の問題だけではありません。
2018年時点で介護労働者の21.6%が60歳以上となっており、介護人材の高齢化も深刻です。
また若い世代(20代や30代)の介護職員の割合は比較的低く、このことが介護業界全体の高齢化を加速させる一因となっています。
サービスの質の担保も難しくなるのではないかと懸念されている現状です。
■人材不足の背景とは
上述のような介護業界における人手不足は、日本全体の「少子高齢化」が主な原因です。
2017年には6,530万人だった労働人口は、2040年には5,245万人と約20%も減少する見通しとなっており、日本全体が労働力人口の減少に直面しています。
介護業界だけでなく、どの業界でも不足感は年々増しており、採用は難しくなる一方です。
さらに介護業界の場合は、高齢者はどんどん増えているため需要も増える一方となっています。
そのために、他の業界よりも深刻な人材課題を抱えていると言えます。
介護士不足に対する政府の対策
■介護士不足に対する政府の施策とは
国内外からの人材確保や職場環境の改善を目的として、政府は様々な施策を立てています。
1. 介護職員の処遇改善
介護職員処遇改善加算:介護職の魅力を高め、定着率の向上を目的に介護職員の給与を引き上げるための財政支援
特定処遇改善加算:経験年数や資格による差別化を図り、特に経験豊富な介護職員の処遇を改善するための加算制度
2. 外国人労働者の受け入れ
技能実習制度:外国人技能実習生を介護業界で受け入れ、実務経験を積ませる制度があります。これにより、外国人労働者の受け入れを促進しています。
特定技能制度:2019年に導入された特定技能ビザにより、一定の技能と日本語能力を有する外国人が介護分野で働けるようになりました。
これにより、介護現場における外国人労働者の数が増加しています。
3. 若年層の参入促進
介護福祉士養成支援:介護福祉士を目指す若年層に対して、奨学金や資格取得支援を提供し介護業界への参入を促す
魅力発信:学校や地域社会での啓発活動を通じて、介護職のやりがいを伝え若者の参入を促進
4. 介護現場のICT導入支援
介護ロボットの導入支援:介護ロボットやICT(情報通信技術)の導入を支援し、介護職員の負担軽減を図っています。
これにより、少ない人員でも効率的に介護サービスを提供できるようにしています。
業務効率化の推進:ケア記録の電子化やシフト管理システムの導入など、介護現場での業務を効率化するための支援策を講じています。
5. 地域包括ケアシステムの推進
地域密着型サービスの強化:地域包括ケアシステムの推進により、地域内での介護サービス提供を強化し地域住民の自助・共助を促進しています。
これにより、介護の負担を地域全体で支える仕組みが構築されています。
6. 介護職員の研修とキャリア支援
継続教育とキャリアアップ:介護職員のスキルアップやキャリア形成を支援するために、継続的な研修制度やキャリアパスを整備しています。
これにより、職員の専門性を高め、離職防止を図ります。
これらの国策を通じて、日本政府は介護業界の人材不足に対応し、持続可能な介護サービス提供体制の構築を目指しています。
最新の調査結果とは
2024年7月10日に介護労働安定センターが公表した「介護労働実態調査」によると以下のような調査結果が出ています。
■介護事業所による介護職員の人材不足感
大いに不足 31.3%
不足 28.4%
やや不足 21.7%
とこれらの合計は8割を超えた結果になりました。
「大いに不足」が3割を上回るのは、ヘルパー不足が加速した直近10年で初めての結果です。
「大いに不足」と「不足」の合計約6割も、直近10年で最悪の水準となっています。
■介護職不足が与える影響とは
このまま介護職が不足すると以下のような影響が社会全体に及ぶと考えられます。
1. 介護サービスの質の低下
十分なケアが提供できない、スキルの偏りが生じると言った質の低下
2. 介護職員の負担増加
過労とストレスの増加により今でも厳しいと言われている介護の仕事に対してさらなる負担がかかる可能性があります。
3. ご利用者さまへの影響
サービスの遅延や中断や安全性の低下が生じる可能性があります。
4. 介護サービスの供給不足
サービス提供の縮小や停止といったことも考えられます。