厚生労働省が介護福祉士国試の「パート合格」制度導入の検討を進めているのはご存知でしょうか?
今までは1度の試験で全ての科目を取得するのが厳しい状況で受験を諦めている人が目立っていました。
そのための対策として、「パート合格」制度導入の検討を進めているところです。
具体的にこの制度の導入によってどのような影響があるのか解説していきます。
目次
介護福祉士国家試験とは
政府が「パート合格」を検討中
「パート合格」の意味とメリットデメリット
介護福祉士国家試験とは
まずは介護福祉士国家試験についてまとめてみます。
■介護福祉士とは?
介護福祉士とは介護の専門的な知識と技術を持ち、
身体や精神の障害により日常生活に困っている方への介護や他の介護者への指導などをする介護の国家資格です。
■受験資格は?
介護福祉士国家試験を受験するためには、①~③のいずれかの条件を満たす必要があります
①養成施設の修了
介護福祉士養成施設(専門学校や大学)での所定の課程を修了した者
②実務経験
高校卒業後、介護現場での3年以上(従業期間1080日以上、実務日数540日以上)の実務経験がありかつ実務者研修を修了した者
③福祉系高等学校の卒業
福祉系の高等学校を卒業した者
■受験内容は?
介護福祉士国家試験は「筆記試験」と「実技試験」から構成されています。
・筆記試験:主に介護に関する基礎的な知識、法律、介護技術に関する問題が出題されます。
科目には「人間の尊厳と自立」、「社会福祉制度」、「介護過程」などが含まれます。
・実技試験:介護技術を実際に行う能力を測定する試験です。
例えば、ご利用者さまへの食事介助や移動介助などの場面が課題となることが多いです。
ただし、筆記試験で高得点を得た場合は、実技試験が免除されることがあります。
■合格基準は?
合格基準は毎年異なる場合がありますが、通常、筆記試験では総得点の60%以上、かつすべての科目で一定の点数を超える必要があります。
実技試験についても、採点基準を満たすことが求められます。
政府が「パート合格」を検討中
ではパート合格とはいったいどのようなものなのでしょうか?
■パート合格とは
「パート合格」とは特定の試験科目で一定の基準を満たした場合にその科目に対して合格が認められる制度を指します。
これは、介護福祉士国家試験の受験者が試験全体には不合格となった場合でも、一部の科目で高得点を得た場合その科目に対して次回の試験で免除が適用される制度です。
■パート合格の特徴
対象:パート合格は、筆記試験のみに適用されます。実技試験についてはパート合格の制度はありません。
適用基準:特定の科目で一定以上の得点(通常は合格基準点の60%以上)を得た場合、その科目については次回受験時に免除されることがあります。
有効期限:有効期限は翌年の試験のみです。つまり、翌年の試験に限ってその科目が免除されます。
メリット:翌年の試験で免除された科目を再度勉強する必要がなく、他の科目に集中して準備することができます。
「パート合格」の意味とメリットデメリット
パート合格制度は、受験者が特定の科目で高得点を取得した場合にその科目を次回の試験を免除する制度と前述でも説明しました。
では受験者や事業者にとってこのパート合格におけるメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
■パート合格のメリット
・資格取得者が増えることで介護業界の人材不足が緩和されます。
・外国人介護人材も資格取得しやすくなることで外国人人材の活用促進につながります。
・パート合格によって次回の試験で一部の科目が免除されるため、受験者は残りの科目に集中して勉強できます。
・自分のペースで受験に挑めるため、働きながら資格取得がしやすくなります。
■パート合格のデメリット
・特定の科目に対する免除により、残りの科目への偏りが生じる可能性があります。結果的に、社会福祉士としての総合的な知識やスキルの専門性が低下する恐れがあります。
・資格が取りやすくなることで、待遇改善や職場環境の向上が進まなくなる可能性があります。
・翌年に再受験する際、パート合格によって免除された科目の内容が試験の改訂や制度変更によって変わる可能性があります。
これらの懸念が払拭されるよう制度設計をおこない、導入後も評価と断続的なフォローが求められていくことでしょう。