近年、多くの企業が介護事業に参入し、競争が激化していることをご存じでしょうか?
理由は日本の高齢化社会が進み要介護者の増加したことによって介護サービスの需要が高まっているためです。
特に他業種からの参入が増えており、買収や新規事業の立ち上げが活発に行われています。
今回は昨今の日本における介護業界の新規参入の動きをまとめていきます。
目次
介護業界への新規参入の背景
介護業界へ新規参入数は
一方で介護業界での倒産数も伸びている
介護業界への新規参入の背景
介護業界に新規参入する企業が増えている背景を詳しくご説明しましょう。
まずは、大きな要因として日本の高齢化社会が進み、高齢者の割合が急速に増えていることが挙げられます。
2000年の時点では65歳以上の高齢者は全人口の17.2%でした。
しかし、2050年には全人口の35%を超えると予想されているため、介護事業の市場も拡大しているのです。
2000年の介護保険制度が開始されたときは介護市場が3.6兆円だったのですが、2014年には年間で約8兆6000億円に、2020年に15兆近くにまで達し年々市場が拡大しているのです。
今までに後期高齢者がこれだけの割合になることはなかったため、介護業界では急速に環境整備が必要になっている状況です。
また、介護事業では貸し倒れなどでキャッシュフローが悪化する危険が少ない点が介護事業のメリットとされています。
国が売掛先になるため報酬の9割は国民健康保険団体連合会からの支払いになるからです。
そのため介護業界への新規参入する企業が増えているという状況があります。
それでは、介護業界への新規参入数はどの程度のものなのでしょうか。
介護業界へ新規参入数は
2024年6月24日東京商工リサーチの報告により介護業界への新規参入数に関して以下のような発表がありました。
2023年の1年間に新設された介護事業者の法人は3203社と、5年連続で前年を上回る結果となりました。
とくに訪問介護やデイサービスなどの展開を計画する事業者が多かったようです。
また、業務の効率化や人材確保を目的とした合併・買収も活発に行われており、業界全体で新しい事業者が増えているという状況でした。
日本では、今後も要介護者が増えていくことが予想されます。
これは介護職員の需要も伸び続けるということを意味し、引き続き介護事業を取り巻く市場は伸びることが想定されているのです。
しかし、すべての数値が理想通りに伸びている訳ではなく、新規参入の増加だけではなく、倒産数も実は伸びていました。
一方で介護業界での倒産数も伸びている
一方で、2024年の介護業界における事業者の倒産が過去最悪のペースで進行していることが報告されています。
2024年上半期には介護事業者の倒産件数が81件に達し、これは前年同期比で50%も増加しており過去最多件数を更新しました。
なかでも訪問介護やデイサービスの倒産件数が増加しており、訪問介護では34件、デイサービスでは22件の倒産が報告されています。
これは他業界の賃上げによる人材流出や、賃金格差の拡大が倒産増加の要因として挙げられています 。
このような状況は、介護業界全体の深刻な人手不足や物価高騰が背景にあり、経営環境が一層厳しくなっていることを示しています。
2024年度の介護報酬は+1.59%でしたが、基本報酬が想定ほど上がらず事業継続をあきらめた倒産が押し上げている可能性もあります。
人手不足や物価高騰などの介護業界単独では根本的な問題は解決できないだけに、しばらくは倒産の増勢が続きそうです。
このように、介護を取り巻く環境では、新規参入が増える一方で、倒産数も増えるという状況が見られます。
特に双方の動きにより見えてくるのは、深刻な人材不足という見方もできるのではないでしょうか。
今後、より一層介護職人材の確保についての議論が高まりそうです。