TOPICS

業界情報

訪問介護での若手雇用を東京都が推進!7億円の新事業とは

訪問介護での若手雇用を東京都が推進!7億円の新事業とは

2024年3月、訪問介護分野での若手の雇用促進を目的に約7億円をかけて、東京都が新事業の計画を策定したことを発表しました。

訪問介護に特化した人材確保事業は都で初の試みといわれています。訪問介護職員の高齢化を背景にした業界全体での問題を解決するために東京都が作成したこの計画について今回は説明していきます。




目次

東京都での訪問介護の現状

2024年の介護報酬改定での訪問介護の扱い

7億円の新事業で、訪問介護を支援




東京都での訪問介護の現状


東京都の訪問介護サービスの特徴として、地域包括ケアシステムの構築が進められており、訪問介護事業所や地域の医療機関、福祉施設などが連携し、ご利用者さまのニーズに応じたサービス提供が行われています。

そういった良い点もある一方で東京都が抱えている訪問介護の課題点として大きく2点があるといわれています。


①人手不足

高齢化が進む中で、訪問介護サービスの需要が増加していますが、介護職員の不足が深刻化しています。

質の高い介護スタッフを確保すること、特に若手の介護職員の確保が難しく、また離職率の高い状況が続いています。


②小規模化

東京都や人口密集地域では、小規模な訪問介護事業所が多くあります。

小規模な事業所が増加すると、人材確保の難しさ、コストの上昇などの問題が生じやすくなるといわれています。


また、大規模な事業所に比べると研修制度の徹底が難しいなどが課題になります。

これらの課題に対処するために、人材確保策の強化やサービスの効率化、地域別のニーズに応じた対応など、総合的な取り組みが必要とされています。




2024年の介護報酬改定での訪問介護の扱い


厚生労働省は2024年の4月以降に施行する介護保険制度の改定で、事業者がご利用者さま(要介護者または要支援者)に対し介護サービスを提供した際に対価として得られる費用、つまり介護報酬を引き上げることを発表しています。

総改定率では1.59%の引き上げです。


しかし、訪問介護サービスでは、新たな加算の創設や処遇改善加算の加算率を大幅に上げるとしながらも、基本報酬の引き下げを実施することとなっており身体介護、生活援助のいずれも単位数が下がることとなります。

厚労省は2024年度の介護報酬改定において、訪問介護の基本報酬を引き下げた理由を「さまざまな要素を考慮してメリハリを効かせた」と説明しています。


2023年11月に公表の「介護事業経営実態調査」によると全サービスの平均収益差率は2.4%で前年度より0.4ポイント低下し、過去最低の水準となっています。

特に入所系サービスの収支差率の低下が著しく、これまで順調に収益を上げていた特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、前年度との収支差率がはじめてマイナスになりました。


ほかにも入所系サービスの経営状況が悪化している結果となっています。

一方で、訪問介護や通所介護、訪問リハビリ、通所リハビリ、福祉用具貸与、居宅介護支援などの居宅サービスでは収支差率が上がっています。

訪問介護では、2022年度決算の収支率が7.8%となっており、利益が出すぎているサービスであると受け取られ、今回の基本報酬の引き下げに至ったようです。




7億円の新事業で、訪問介護を支援


東京都が推進する7億円の訪問介護での若手雇用に関する事業は、具体的には「東京都若者訪問介護スタッフ養成事業」です。

このプログラムは、若者を訪問介護のスタッフとして育成・雇用することを目的としています。


訪問介護サービスは高齢者の自宅での生活支援を行う重要なサービスであり、東京都ではこれによって雇用創出と高齢者の生活支援の両方を促進しようとしています。


訪問介護に特化した人材確保事業は東京都で初の試みとなり、介護未経験者の就労へのハードルを下げるために、さまざまな取り組みを行う予定です。

・業務内容をリーフレットや動画で周知

・事業所における資格取得のための支援


こうした背景には訪問介護職員の高齢化があり、年齢構成で多くを占める60~70代の非常勤職員となっており、若手の参入は非常に少ない状況があります。

そこで業界全体で新卒を含めた未経験者を確保するため、事業所の負担を軽減して採用につなげたいという狙いがあります。


今後7億円をかけた東京都の初の試みがどうなるのか注目していきましょう。