「介護難民」という言葉を聞いたことはありますか?
「施設に入りたいと思っていたけれども3年待ちと説明されてしまった」
「介護って誰でも簡単に受けられるものでしょう?」
など「介護難民」という言葉を聞いて思うことは立場により人それぞれだと思います。
本記事では現在社会問題となっている介護問題の基礎知識からその背景、今後の課題まで説明していきます。
目次
介護難民とは
介護難民が増加した原因
対策や取り組みとまとめ
介護難民とは
介護難民とは、介護が必要な方が、介護サービスを誰からも受けられず困っている人のことを指します。
厚生労働省や政府によって正式に定義づけられた言葉ではありませんが、保育園への入園が叶わない待機児童問題と同様に、大きな社会問題となっています。
・介護施設の空きがなく入居できない
・家族が遠方に住んでいて介護にあたれない
など理由はさまざまです。
在宅介護をしてくれる人がいないだけではなく、病院や介護施設でも受け入れてもらえないため、介護サービスが受けられないのです。
そのため、要介護者の子供や孫といった若い家族が仕事を休職もしくは退職し、介護に専念せざるを得ない状態になり、家族全体が経済的に困窮することにもなります。
介護難民の具体的な人数を示す公的なデータはありません。
しかし厚生労働省が公開した2022年4月時点の特別養護老人ホーム(特養)の待機者数を見ると、約27.5万人が入所待ちとなっています。
介護難民が増加した原因
介護難民が増える直接的な原因は、高齢者の増加です。
2025年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上になります。
「日本創生会議」という研究機関が2015年に発表した研究結果によると、2025年に予測される都心での介護難民は約13万人ほどです。
内閣府の「高齢社会白書」(令和4年度版)では、日本の高齢化率は28.9% で、高齢化が進んでいます。
そのような事態であるにもかかわらず、介護の仕事に就く人材が少ないことから、介護難民が増えると予測されるのです。
介護難民が増加する一方、介護職員の人手不足が深刻化しています。
介護労働安定センターが2021年度に実施した「介護労働実態調査」では、「従業員が不足している」と回答した事業所は全体の60%以上となりました。
対策や取り組みとまとめ
今後、日本全体の問題として介護難民の解決は避けられない課題ですが、解決策にはどのようなものがあるのでしょうか。
介護難民の問題に対して国がおこなっている対策は4つあります。
①外国人介護職員の受け入れ
外国人材の受け入れを国が積極的に行っています。
出入国在留管理庁の在留外国人統計では、2022年12月末時点で全国で6,284人の留学生が介護業界で勤務をしています。
②介護ロボットやICTの導入
介護ロボットやICT(情報通信技術)を活用することで文書作成時間の短縮や介護職員の身体的負担の軽減などの効果があるといわれています。
③地域包括ケアシステムの整備
厚生労働省は、2025年を目途に、地域に暮らす高齢者を包括的に支援し、サービス提供ができる体制「地域包括ケアシステム」を推進しています。
高齢者を地域で支えるために、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が一体的に提供されるシステムを、地域の特性を活かしながら作り上げていくことを指します。
④介護職員の処遇改善
「介護職員処遇改善加算」により、介護職員の待遇や労働環境の改善をする施策です。
介護は誰もが直面するといっても過言ではない問題です。
日々、自分ができることを考えるきっかけにしてくださいね。