アートセラピーという言葉を聞いたことはありますか?
アートセラピーは日本ではまだなじみの薄いセラピーになりますが、芸術療法と呼ばれいろいろな手法があり、介護施設などでの活用も期待されています。
今回は、アートセラピーの概要や種類、効果などについて知識を深め、介護施設においてどのように活用できるのかを学んでみましょう。
目次
アートセラピー(芸術療法)とは
種類と効果
アートセラピーの注意点
アートセラピー(芸術療法)とは
アートセラピーとは、1942年に絵を描くことで自らの病気を回復させたイギリスの芸術家エイドリアン・ヒルが初めて用いた言葉で、絵や造形、刺しゅうといったさまざまなアートを通じて心を癒やす治療法です。
アートによって「ありのまま」の心を表現することで、自分では気付いていなかった本当の気持ちに気付いたり、うまく言語化できなかった心のモヤをスッキリさせたりすることができるといわれています。
現在、イギリスやアメリカでは、医療・福祉・教育の場などでアートセラピストによるアートセラピーが盛んに実践されています。
日本では、絵画や造形活動のほか、音楽、俳句、演劇、ダンスなどのあらゆる芸術的な活動を総称してアートセラピーといいます。
創作活動を通して利用者様の潜在的な能力を引き出すため、認知症ケアとしての効果も期待されています。
現在日本でのアートセラピスト資格は、民間資格のみになります。
本格的にアートセラピーを学ぶなら、民間の資格学校や芸術系大学、専門学校に通って学び、介護現場で生かすことができるでしょう。
種類と効果
アートセラピーにはどのような種類があるのでしょうか?
医療・介護の現場で活用されているアートセラピーの種類をいくつか紹介します。
・箱庭療法
箱庭療法とは、砂が入った箱(箱庭)に人間や動植物などのミニチュアを配置し、世界観を表現する方法です。
言葉に出来ない、伝えきれない思いや気持ちが、箱庭を通して現れる中で、その人の自己治癒力が少しずつ働き出し始めるようなイメージで活用されます。
・コラージュ療法
コラージュ療法では、異なる素材や色を組み合わせて貼り、完成したアート作品から、利用者の心情を把握したり、ご利用者さま自身が自己理解を深めたりしていきます。
・音楽療法
音楽療法には、クライアント自身が歌や楽器で音を鳴らす能動的音楽療法と、音楽を聴く受動的音楽療法があります。
高齢者にとっては能動的に歌を歌ってのどや肺活量をきたえることにより、嚥下障害の防止に期待できます。
また、受動的音楽療法では、音楽を聴くことによってリラックスしたり癒やされたりする効果が期待できます。
・ドラマセラピー
ドラマセラピーとは、ドラマ(演劇)を利用する心理療法です。
さまざまな役を演じることにより、他者の気持ちを理解したり共感したりすることができるなどの効果を得られるといわれています。
・園芸療法
園芸療法は、園芸によって心の癒やしを求める療法です。
土と触れ合ったり収穫物を得たりすることで、五感が研ぎ澄まされ、意欲も向上し、心身ともに健康になっていくとされています。
アートセラピーの注意点
上記のように、いくつかのアートセラピーがありましたね。
ではアートセラピーを取り入れるときの注意するポイントについて解説していきます。
まず、ご利用者さまの状態に合ったアートセラピーを選ぶことが大切です。
例えば、足腰が弱っているご利用者さまを対象にダンスセラピーを取り入れた場合、転倒してしまうリスクがあります。
このように、さまざまなリスクを考え、選ぶ必要があります。
また、認知症の方は異食してしまう可能性があるため、食べてしまわないようにしっかりと見守りを徹底、害のないものを使うなどの工夫が必要になります。
ご利用者さまが一生懸命つくって仕上げた作品の出来栄えで評価せず、制作中の様子や仕上がった時の表情などを見ることで変化に気づくことが大事です。
また、他の利用者様と比べないようにしましょう。アートセラピーはご利用者さまの個性を活かすものであり、作品のクオリティは関係ないため、ご利用者さま同士を比べたり、上手な方だけを褒めたりしてはいけません。
ご利用者さまが上手に仕上がることが出来ず、落ち込んだ場合、前向きな言葉をかけてあげるなどしていくといいでしょう。