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ベンクト・ニィリエ=ノーマライゼーションの8原理

ベンクト・ニィリエ=ノーマライゼーションの8原理

障害者が一般市民と同様の普通の生活・権利などが保障されるように環境整備を目指す理念「ノーマライゼーション」の育ての親として知られる、スウェーデンのベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8原理」について理解を深めましょう。


目次

  1. 【1】「ノーマライゼーションの育ての親」ベンクト・ニィリエ
  2. 【2】デンマークからスウェーデンに広がった「ノーマライゼーション」
  3. 【3】「ノーマライゼーション」を成文として成立させ定義付けたベンクト・ニィリエ
  4. 【4】ベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8原理」
  5. 【5】ベンクト・ニィリエの「ノーマライゼーションの8原則」で気づかされること
  6. 【6】まとめ


「ノーマライゼーションの育ての親」ベンクト・ニィリエ

ノーマライゼーションとは、障害を持つ人が一般市民と同じように普通(ノーマル)の生活ができ、権利などが保障されるように環境整備を目指す理念です。

デンマークのバンク・ミケルセンが「ノーマライゼーションの父」や「ノーマライゼーションの生みの親」と呼ばれていますが、それに対して、スウェーデンのベンクト・ニィリエは「ノーマライゼーションの育ての親」と言われています。

その理由は、ノーマライゼーションの原理を世界中に広めることに貢献したためです。


デンマークからスウェーデンに広がった「ノーマライゼーション」

ノーマライゼーションはデンマークの知的障害者の親の会による運動をきっかけに生まれました。

デンマークの社会運動家であったバンク・ミケルセンは、ナチスの強制収容所に収容されていた経験があり、たくさんの知的障害者が収容されている大型施設の生活環境が、まるでナチスの強制収容所の生活を彷彿させるものに感じるようになりました。

そのため、障害者たちも障害を持たない人たちと同じように自由に生活するべきだと考え、知的障害を持つ子の親たちの願いを受けて、「ノーマライゼーション」は始まりました。

このようにしてデンマークで始まったノーマライゼーションの流れは、1960年代にベンクト・ニィリエがいるスウェーデンにも広がっていきました。


「ノーマライゼーション」を成文として成立させ定義付けたベンクト・ニィリエ

 

ベンクト・ニィリエ=ノーマライゼーションの8原理

 

スウェーデンでノーマライゼーションの運動に携わったベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションの原理を整理し、文化として紹介し、世界中に広めました。

そして、8つの原理を掲げ、障害者もこれらを実現しなければならないと位置づけました。

これがベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8つの原理」です。


ベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8原理」

障害者であっても、住居や教育、労働環境、余暇の過ごし方など、日常生活の条件をできる限り、障害のない人と同じような条件にすることを目的とし、ベンクト・ニィリエが提唱したのが「ノーマライゼーションの8原理」です。

①一日のノーマルなリズム

②一週間のノーマルなリズム

③一年間のノーマルなリズム

④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

⑥ノーマルな性的関係

⑦ノーマルな経済水準とそれを得る権利

⑧ノーマルな環境形態と水準


①一日のノーマルなリズム

たとえ重い障害がっても、朝、目が覚めて、顔を洗って、着替えて、家から学校や

職場へ行く。

ずっと家にいるだけではなく、普通の人と同じように社会に属し、その日、1日をどう過ごすかを考える。

ベッドではなく、ちゃんと食卓で食事をする。スプーンだけを使うのではなく、お箸やフォーク、ナイフなども、ちゃんと使う。

介護職員の都合などで、夕方のお早い時間に夕食を済ませない。

夜には、その日やり遂げたことを振り返る。

一日は単調な同じことを繰り返す24時間ではない。


②一週間のノーマルなリズム

週5日、自宅から学校や職場に行く。もちろん他の場所にも遊びに行く。

週末には仲間との楽しい集まりもある。


③一年間のノーマルなリズム

普通の人と同じように、長期のお休みもある。

それによって日々に変化が出る。

季節によってさまざまな食事をし、仕事も変化があり、行事も楽しむ。

スポーツや旅行など、余暇の活動も楽しむ。


④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

幼少期は夏はキャンプに参加する。

青年期には服装や髪型にこだわりを持ち、おしゃれを楽しむ。

音楽や異性との交流も普通の人のように興味を持つ。

成人したら、仕事を通して責任も負う。

老年期はそれまでに積み上げた思い出に浸り、経験から生まれた知恵にあふれる。


⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

普通の人と同じように自由と希望を持って生きる。

周囲の人もそれを認め、障害を持つ人を尊重する。

大人であれば、自分が望む地域に住み、自らに適した仕事を自分で見つけて決める。

趣味にも時間を費やし、楽しむ。


⑥ノーマルな性的関係

子供であっても大人であっても、異性との良い関係を築く。

青年期は異性との交際に興味を持ち、恋に落ち、人を愛し、愛され、成人して適した年齢を迎えれば結婚を考える。


⑦ノーマルな経済水準とそれを得る権利

障害の有無にかかわらず、誰もが基本的な公的財政援助を受けられる。

そして、そのための責任を全うする。

児童手当、老齢年金、最低賃金基準法などの社会的保障を受け、経済的安定を図り、自分で自由に使えるお金があり、必要なものや欲しいものを購入できる。


⑧ノーマルな環境形態と水準

障害があるからといって、大規模な障害者施設に住む必要はない。

それは社会から孤立することに繋がるため、普通の人と同じように、望む地域で望む家に住み、地域の人達と交流しする。


ベンクト・ニィリエの「ノーマライゼーションの8原則」で気づかされること

ノーマライゼーションは時に、「障害を抱えている人たちをトレーニングして、できるだけ普通(ノーマル)の生活ができるようにサポートする」という考え方に誤解されることがあります。しかし、それは大きな間違いです。

ベンクト・ニィリエの「ノーマライゼーションの8原則」では、特に、健常者(障害も持たない人)が無意識に偏見を抱き、「障害がある人は普通の生活ができない、サポートが必要だ」と考えがちです。

それにより、障害がある人たちの権利を奪い、人権を侵害している可能性さえあります。

大切なことは、健常者が色眼鏡で障害者に対して接しないことなのでしょう。


まとめ

今回はベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8原理」について紹介しましたが、いかがでしたか?

デンマークで始まった「ノーマライゼーション」が社会に必要な考え方だと強く認識され、ベンクト・ニィリエがいたスウェーデンへ広がり、その後世界中で重要性が理解されるようになりました。

「ノーマライゼーションの8原理」が提唱されたのは約50年も前となりますが、自立支援の方向性を確認する上でも非常に大切な理念と言われていますので、介護に関わる人はぜひ心に留めておきたいですね。