コマニチュードという言葉を聞いたことはありますか?おそらく聞いたことのない人も沢山いるのではないでしょうか。
ユマニチュードとは「人間らしさを取り戻す」ことを意味するフランス語で、フランス発祥の認知症のケア技法のことです。
「人間らしさと優しさに基づいた認知症ケア」を表現する言葉として、現在日本の介護業界でも注目を集めている言葉です。
現在では、すでに10か国以上の国で導入されている考え方で、ときに「奇跡」などと称されるほどその効果を実感する人が多いコマニチュード。
ぜひ本記事を読み、コマニチュードを理解し、介護の現場で実践してみてくださいね。
目次
ユマニチュードとは
4つの柱と5つのステップ
注意すべきこととまとめ
ユマニチュードとは
「ユマニチュード=平等・友愛の精神を大事にする「優しさ」のケアを表す言葉」で、人間らしさを形にした介護のことを表します。
認知機能が低下した方は、介護者を拒絶したり、感情的になったりすることがあります。
そのため介護をおこなうとき、「相手が介護に非協力的」「暴言を吐かれたり暴力をふるわれたりする」など、相手との関係構築の難しさの壁にぶつかることがあるでしょう。
しかし相手を1人の人間として敬意を持って接することで、互いに信頼関係が生まれ、こういった行動の改善に繋がるとされています。
「人間は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利について平等である」という理念を実現させる手段としてケアの技術を捉えているのがユマニチュードです。
平等であることを、ケアの技法に具体的に示したことは、ケアする側、される側ではなく、共に「優しさ」を共有することに繋がるのです。
4つの柱と5つのステップ
ユマニチュードはとくに認知症を持つ方に有効とされており、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つを柱(ケア技術)が大切とされています。
①「見る」
「見る」という行為により、ポジティブなメッセージを伝える技術です。基本は【水平な高さで、近い距離で、長い時間相手を見る】ことです。
②「話す」
声のトーンは優しく、歌うように穏やかに語りかけることが大切です。
③「触れる」
身体介助などで触れる際は、「相手を大事に思っている」ということが伝わるように「触る前に必ず声をかける」などに気を付けましょう。
④「立つ」
人は、寝たきりでいると全身の機能が大幅に低下するため無理のない範囲で、立位でいる時間を作るようにしましょう。
4つの柱を前提に、次に5つのステップで実施していきます。
①出会いの準備
部屋に入る段階で、受け入れてもらえるかどうか相手に確認します。
ノックをする、声をかけるといった方法が一般的です。
②ケアの準備
ケアの準備としてこれから何をするのかを相手に伝えます。
4つの柱を大切にできるだけ快く同意してもらえるように関わります。
この段階で承諾を得ることができたら、認知症の方のケアへの抵抗や攻撃的な行動が大幅に減ると言われています。
③知覚の連結
言葉と行動に一貫性を持たせながら、ケアを実施します。
4つの柱にある「見る」「話す」「触れる」のうち2つ以上を同時に行います。
④感情の固定
認知症の方は、出来事自体を忘れても感情は覚えていることが多いため、ケアが気持ち良かった、嬉しかった、心地よかったなどのポジティブな気持ちで終えることが大事です。
⑤再開の約束
メモ帳などに次の予定を記しておくと、気持ち良いケアであった場合は次回の来訪を楽しみにしてくれるでしょう。
注意すべきこととまとめ
コマニチュードを行うとき、注意すべきポイントを下記にまとめてみました。
・怒鳴ったり叱りつけたりなど、命令と強制はしない
・失敗したことを責めたり、間違いを指摘しない
・行動を制限したり、急かさないようにしない
・時間的な余裕を確保した状態で実践する
・職員の行動や態度はご利用者さまに伝わることを忘れてはいけない
・身体のプライベートな部分は触れないようにする
・ユマニチュードの「見る」「触れる」「話す」「立つ」の技術を意識する
・優しい声掛けを意識する
このように、職員の人員配置がしっかりしている、時間に余裕がある状態でコマニチュードの実践をしていくことに心掛けましょう。
コマニチュードは人と接すること自体、当たり前のことなのではと感じる人もいるかもしれませんが、当たり前を当たり前にしていくのが難しい人もいます。
「見る」「触れる」「話す」「立つ」の技術を活用していき、「人間らしさを取り戻す」というケア技法はもっとも認知症患者数が多い日本こそ、コマニチュードは欠かせない存在となってきているのではないでしょうか。
是非、コマニチュードを活用し、認知症患者の心を穏やかにしていくことが出来たら良いですね。