最近、ポリファーマシーという言葉を聞いた事はありますか?
いわゆる「多剤併用・多剤服用」の事を指し、近年健康を崩す高齢者が増加している問題があります。
介護の現場においてもその多剤併用・多剤服用(ポリファーマシー)における問題に直面することも多くなってきているのではないでしょうか。
今回は、介護職が知っておくべきポリファーマシーについて解説します。
目次
多剤服用・多剤併用(ポリファーマシー)とは
問題点と対策
介護職としてできる事は
多剤服用・多剤併用(ポリファーマシー)とは
「ポリファーマシー」の由来:英語で“複数”を表す「poly」 + “調剤”を表す「pharmacy」=polypharmacy
複数の薬剤が過剰に処方されることで、投与された方の健康に悪影響が生じる可能性のある状況のことポリファーマシーと呼びます。
(※ポリファーマシーが多剤併用ということではなく、多剤併用自体が悪いことでもありません。)
多剤併用をすることで起こる弊害としては3点あります。
①飲み合わせによる副作用の発生リスクの増加
②飲み間違い、飲み忘れの発生
②服薬アドヒアランスの低下
など、患者さまの健康維持に関わるさまざまな問題が生じることを指します。
特に高齢者はポリファーマシーが起きやすいといわれ、主な原因は以下となります。
①医療サービスを受ける機会が増えるため
②多くの薬剤を併用するケースが増えるため
疾患や生活習慣などの要因で服用する薬は変わるため、「何種類の薬を服用すればポリファーマシーにあたるのか」という厳密な基準はありません。
そのためポリファーマシーを防ぐには、単に薬の種類を減らすのではなく、一人ひとりの健康状態や生活習慣に合わせて調整することが重要と言えます。
問題点と対策
ポリファーマシーが問題視されている大きな理由として、「その人にとって有害だから」という点が大きくあります。
薬物有害事象
①軽いめまいやふらつき程度のもの
②肝機能障害や低血糖を引き起こすもの
③重症なものだと死亡にいたるもの
軽いめまいやふらつきだったとしても転倒し骨折するなどして今後のQOLに大きく影響することもあります。
また、もう1つ大きな視点として、多くの薬が処方されるということは、国民医療費の増大にも繋がります。
例として【調剤医療費】
2000年~2018年の調剤医療費 → 2.5倍以上に増加(2018年度には国民医療費全体の17.6%を占める)
ではポリファーマシーを回避する対策としてなにが有効でしょうか。
ポリファーマシーを回避するには、多剤併用を避けるような心がけを医師・医療スタッフがすることが大切です。
・予防薬のエビデンスは妥当か
・対症療法は有効か
・薬物療法以外の治療手段はないのか
・優先順位は適正か
といったガイドラインが日本老年医学会から出ています。(「高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン2015」より)
介護職としてできる事は
ポリファーマシーを回避するために介護職にできることはなんでしょうか。
ここでは、ポリファーマシー対策の中で介護職ができる役割について2つ紹介します。
①ご利用者様の状態や処方薬の内容をスタッフ間で情報共有する
介護職は、ご利用者様と身近に接しているため、心身の状態や薬の服用状況を最も把握している存在といえます。
正しく内服しているか、処方薬の影響で何らかの症状が現れていないかといった具体的な情報を、医師、看護師、薬剤師に伝えられる重要な役割を担っています。
ご利用者様の健康状態をチーム全体で把握し、医療関係者は薬が適切か判断する、こういったチーム全体での介護がポリファーマシー対策には重要です。
②ご利用者様が薬を服用しづらいと判断した場合、医師、看護師、薬剤師に相談する
「薬が多すぎて飲めない」「錠剤が大きすぎる」など相談された経験があるかたもいると思います。
ご利用者様は薬が服用しにくいと感じると、適切に服用しなくなり、症状の改善や治療に影響を及ぼす恐れがあります。
相談を受けた際は医師や看護師、薬剤師に介護職から相談をすることで、薬を一方化したり形態を変えるといった解決策が導き出されるかもしれません。
介護職として、いつでも正確な情報が提供できるよう、日々の観察を丁寧に行っていきましょう。