音楽によって心や身体のケアを行うミュージックセラピー。
近年医療や介護の分野で注目を集めている療法ですが、このミュージックセラピーを行う専門家が“音楽療法士(ミュージックセラピスト)”です。
いったいどのような資格なのか、詳しく解説します。
目次
- 注目を集めているミュージックセラピーとは?
- 音楽療法士(ミュージックセラピスト)はどんな資格?なるにはどうするの?
- 音楽で身体や心のケアをしたい方にオススメ
音楽を聞いたり、合奏することで、様々な効果を得ることができる“ミュージックセラピー”。
近年、“ミュージックセラピー”は、医療や介護の分野で注目を集めています。
その“ミュージックセラピー”を行う専門家が“音楽療法士(ミュージックセラピスト)”。
“音楽療法士(ミュージックセラピスト)”とはどのような資格なのか、仕事内容や資格取得の方法等について詳しく解説します。
注目を集めているミュージックセラピーとは?
まず、“ミュージックセラピー”とはどのようなものか、簡単にご紹介したいと思います。
音楽を聞くことでリラックスできたり、その音楽にまつわる思い出がよみがえったという経験を持っている方も多いと思いますが、“ミュージックセラピー”とは、音楽によってもたらされる効果を治療に用いる療法のこと。
リラックス効果だけでなく、音楽を合唱したり歌うことによって身体的な効果を得ることもできるとされています。
実際に、アルツハイマー病の治療やパーキンソン病の治療、精神安定、自閉症やコミュニケーション障害等の子どもの発達障害等に対して用いられている“ミュージックセラピー”。
アメリカで確立され、日本でも2001年に日本音楽療法学会が設立され、医療機関や高齢者施設・障害者施設等で実施されています。
音楽療法士(ミュージックセラピスト)はどんな資格?なるにはどうするの?
音楽療法士(ミュージックセラピスト)は、ミュージックセラピーを行う専門家。
アメリカでは地位を確立している資格ですが、日本では公的な資格としてはまだ認められていません。
自治体や日本音楽療法学会・全国音楽療法士養成協議会・各学校が認定機関として存在しますが、なかでも日本音楽療法学会と全国音楽療法士養成協議会の2つの団体が認定する『学会認定音楽療法士』と『音楽療法士(専修・1種・2種)』という民間資格が良く知られています。
それぞれの資格について、詳しくみていきましょう。
学会認定音楽療法士
日本音楽療法学会は、1995年に設立された日本音楽療法連盟が発展し、2001年に発足した団体。
この日本音楽療法学会が認定する『学会認定音楽療法士』は、音楽療法士(ミュージックセラピスト)の中でも認知度の高い資格となっていて、2010年度末で2,000名の資格保有者がいるとされています。
学会認定音楽療法士になるには、“認定校を卒業する”または“学会が主催する試験に合格する”ことが必要。
まず“認定校を卒業する”という方法を選択する場合の流れについてご紹介します。
日本音楽療法学会が認定する認定校は全国各地に存在しています。
この認定校で必要なカリキュラムを終了することで、学会認定音楽療法士(補)の資格を取得するための筆記試験を受けることができます。
筆記試験に合格後、学会認定音楽療法士の面接試験を受験し、合格すると学会認定音楽療法士となることができます。
高校を卒業してすぐ音楽療法士になりたいという方にオススメのコースです。
そして、“学会が主催する試験に合格する”という方法を選択する場合。
- 日本音楽療法学会の正会員である。(申請時に前年度の会費を納めていること)
- 学校法人格を有する2年以上の専門学校・高等専門学校・短期大学・大学のいずれかを終了していること。
- 音楽を使用した2年以上の臨床経験を含む5年以上の臨床経験を有すること。
という3つの条件を満たしていることが必要となります。
また、上記に加えて
- 必修講習会の受講(講習会ではピアノ実技や音楽理論等の音楽試験を受験すること)
- 医学・心理・福祉・教育の音楽療法関連分野で18単位取得すること
- 学会に参加するなどでポイントを200ポイント取得すること
という条件を満たし、年に1回行われる『学会認定音楽療法士資格審査』に合格することが必要となります。
音楽療法士(専修・1種・2種)
『音楽療法士(専修・1種・2種)』は、全国音楽療法士養成協議会が認定する資格。
資格を取得するためには、全国音楽療法士養成協議会に加盟している大学や短期大学を卒業することが必要となります。
専修・1種・2種の違いは、修士・学士・短期大学士という学位の違いと、取得する単位数の違いによって決まるもの。
ちなみに、専修は大学院等を終了した修士レベルで、協議会が指定する単位を91単位以上取得していることが条件となります。
そして、1種は大学等を卒業した学士レベルで、協議会が指定する単位を98単位以上取得していること。
2種は短期大学を卒業した短期大学士レベルで、協議会が指定する53単位以上を取得していることとなっています。
協議会に加盟している大学や短期大学で単位を取得するだけでなく、卒業するということが条件となっているので、取得するのが難しいともいわれています。
音楽療法士の資格を取得するには、上記でご紹介した大学や短期大学・専門学校へ通学する方法のほかに、自宅で通信講座を受けることで取得できる方法もあります。
自分のペースで学ぶことができますし、通学できる距離に学校が無い場合にも便利な方法となっています。
活躍の場は?
音楽療法士としての活躍の場は
- 病院
- リハビリテーション施設
- デイケア
- 老人ホーム
- 精神病院
- 発達障害者施設
- 福祉施設
- 養護学校
- 小学校や中学校など一般の学校
- 刑務所
- NPO法人
- 企業
など、多岐にわたっています。
国家資格として認められていない認定資格で、まだまだ認知度も低いという面もありますが、ミュージックセラピーは近年、幅広い分野から注目されています。
音楽療法士として専任で就職して活躍している方の他、看護師や社会福祉士・作業療法士・臨床心理士など、臨床で働いている人が、仕事の幅を広げるという目的で音楽療法士の資格を取り、カウンセリングや対象者のケアを補助的に行うなど、活躍の仕方はさまざまなようです。
収入はどれくらい?
音楽療法士として高齢者施設などで働く場合、年収はだいたい300万円程度となっているようです。
大規模な病院等で働く場合、500万円以上の年収となる場合もあるようですが、常勤で働いている人より、パートやアルバイト・非常勤職員として働いている人が多いようです。
また、音楽療法士の資格に加えて、作業療法士や臨床心理士など、他の資格を取得している場合、資格手当が加算されるようです。
音楽で身体や心のケアをしたい方にオススメ
障害を持つ人や高齢者に対して、音楽の持つ効果を利用して身体や心のケアを行う音楽療法士。
注目の集まっている資格ですが、音楽の知識はもちろん、医療・心理など、幅広い知識が必要となる資格となっています。
臨床経験も必要となるため、リハビリテーション関係の資格や臨床心理士・看護師等の資格を取得して現場で働いている場合、資格を取得するのに有利ともいえます。
音楽が好きで、音楽によって身体や心に問題を抱えている人の悩みを解決したいという方にオススメです。