「機能回復訓練」と聞くと、リハビリテーションを思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、介護施設で行われている機能回復訓練は、リハビリテーションとは異なります。介護施設で行われる機能回復訓練について解説していきます。
目次
- 【1】リハビリテーションとは別物!「機能回復訓練」って?
- 1.リハビリテーでションとの違いは?
- 【2】機能回復訓練の目的は?どのようなことをするの?
- 1.訓練の内容はさまざま
- 2.機能回復訓練を担当するのはどんな人?
- 3.機能回復訓練を受けるには?
- 【3】機能を維持して、いきいきとした生活を
リハビリテーションとは別物!「機能回復訓練」って?
“機能回復訓練=リハビリテーション”と思われがちですが、介護施設で行われる機能回復訓練の場合、“リハビリテーション”とは、少し異なるもの。行政指導でも「デイサービスで提供されるサービスは、リハビリではなく機能訓練と表現してください」と指導されるのが一般的です。
では、“機能回復訓練”とはいったいどのようなものなのでしょうか?
リハビリテーでションとの違いは?
まずは、“機能回復訓練”と“リハビリテーション”の違いについて解説します。
“リハビリテーション”とは、“re(再び)-habiris(適した)”というラテン語が語源となっていて、『低下した機能や能力を本来の状態に改善する』という意味を持っています。また、『適応する』『権利の回復』『社会復帰』などの意味も持つことから、社会復帰するための準備や感覚を取り戻すためのトレーニングを行うことも“リハビリテーション”と表現されるなど、広い意味を持っています。
医療や介護の分野で使われている“リハビリテーション”とは、医師の指示により、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士など、専門のセラピストや看護師が行う訓練のこと。病気などが原因で低下した機能を、本来の機能に近づけていくことを目指しています。
一方で“機能回復訓練”とは、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士や看護師など、定められた職種の人が中心となって、病気や加齢などの原因で低下した身体の機能を回復させるために行う訓練や、身体の機能が衰えるのを防止するために行う訓練のこと。医師の指示を必要としないという点で、リハビリテーションとは大きく異なっています。
機能回復訓練の目的は?どのようなことをするの?
加齢や病気によって体力や筋力の低下が起こると、思うように日常生活を送れなくなるなど、生活の質の低下にもつながります。機能回復訓練は、日常生活に必要な機能の維持または低下防止を目的に実施されます。
訓練の内容はさまざま
日常生活レベルの低下を目的に実施する機能回復訓練では、筋力訓練をはじめ、衣類の着脱や食事・排せつなどの日常生活動作訓練や、手芸・工芸、レクリエーションやマッサージなど、さまざまなことが行われます。
訓練を行うことで、転倒を予防する効果や病気による後遺症の改善、寝たきりによる廃用症候群などの予防などといった効果が期待できます。
いったいどのような訓練を行うのか、その内容について、いくつかご紹介していきましょう。
筋力訓練
加齢や病気によって、身体を動かすことが少なくなると、筋力の低下が起こります。また、身体を動かさずにいると、骨への負荷もかからなくなることによって骨も弱くなるということにもつながります。
筋力が弱くなることで、寝たきりになったり、転んで骨折するといった問題が起こる可能性も高くなるため、筋力訓練を行うことが大切となります。機能回復訓練では、個人の能力に合わせた筋力訓練を、担当者と、またはマシンを利用することで行っていきます。
日常生活動作(ADL)訓練
食事や衣服の着脱・排せつといった日常の身辺動作能力が低下している方に対して、日常生活動作が自立して行うことができることを目標に、身体機能の維持訓練を行っていきます。
レクリエーション
レクリエーションでは、なじみのある音楽の合唱やゲームを行うところが多いようです。日中の活動量が増えることで昼夜逆転を防ぎ、心肺機能や免疫力の向上といった効果はもちろん、周りと一緒に同じことを行うことで、対人関係や協調性を再構築していくことも期待できます。
手芸・工芸
手芸や工芸を行うことは、手指の運動にもつながります。そのため、脳の動きを活性化して認知症を予防する効果があるとされています。また、作品を作ることで達成感を得ることもできます。
体操・ストレッチ
体操やストレッチを行うことによって、関節の可動域を広げ、怪我をしない身体づくりが可能となります。また、運動後にストレッチをすることで、筋肉痛を防ぐ効果もあるので、無理のない程度での体操やストレッチは重要となります。
また、これらの訓練のほか、これまでの人生について回想する“回想法”もメジャーな取り組みです。回想法を行うことによって、“懐かしいこと”や“楽しいこと”といった思い出を振り返ることができるため、精神的な安定を図り、認知症の進行を遅らせるという効果が期待できます。
機能回復訓練を担当するのはどんな人?
機能回復訓練は医師の指示を必要としないものですが、誰でも実施できるものではありません。
機能回復訓練を担当することができるのは、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士といった専門のセラピストや看護師のほか、柔道整復師や按摩(あんま)マッサージ指圧師などの資格を取得している方とされています。
上記に挙げた資格を取得している場合、介護施設に配置が義務づけられている『機能回復訓練士』として働くことが可能となります。
理学療法士は筋力訓練や座る・立つ・歩くといった基本動作能力の訓練を、作業療法士は入浴や排せつ・衣服の着脱といった日常生活動作の訓練や手芸・工芸などを行うことで機能回復を図ります。
また、言語聴覚士は嚥下訓練を行うことで誤嚥性肺炎の予防や口腔ケアなどを、看護師はバイタルチェックによって健康状態を判断し、疾患別のリスク管理などを行います。
機能回復訓練士は、施設に最低1人以上の配置が義務付けられている職種です。施設によっては、専門の資格を取得している方を複数名採用しているケースもあります。その場合、それぞれの専門性を活かした活動をしているようです。
機能回復訓練を受けるには?
機能回復訓練を受けることができるのは
- デイサービス
- 特別養護老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 病院
- 介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの介護保険施設
- 地域密着型サービス事業
等となっています。
まだ利用している施設がない場合は、自治体や社会福祉協議会で相談することができるので、お近くの窓口を尋ねてみてくださいね。
機能を維持して、いきいきとした生活を
加齢や病気など、さまざまな理由によって身体機能の低下は起こるもの。身体機能が低下した場合、活動量が低下して寝たきりになったり認知症になったり…と、さまざまな問題が起こります。
病院やデイサービス、介護保険施設などでは、機能回復訓練の専門家が、要介護者のニーズに合わせてプログラムを組み立て、無理のない範囲での訓練を行っています。
食事や衣類の着脱といった日常生活動作等も訓練することができるので、機能回復訓練を受けることで「自分の力でできること」を増やし、生活の質を高めていくことが期待できます。
身体機能を維持し、認知症を防止する効果が期待できる機能回復訓練。自分らしく生活したいという方にオススメです。施設を利用していない方の場合は、まず自治体や社会福祉協議会等で相談してみましょう。