事前指示書は、もしもの時、自分で意思を伝えられなくなっていた場合に備えて、どういう医療・ケアを受けたいのかを記載しておくもの。
いったいどのような内容で、作成するにはどうすればいいのか、今回は、事前指示書についてご紹介します。
目次
- 事前指示書ってどんなもの?なぜ必要なの?
- 事前指示書はどうやって作成する?書式はあるの?
- 事前指示書を作成している人はまだまだ少ない
- 事前指示書を書くだけでなく、周りとも話し合おう
- 事前指示書通りにいかない場合も
事前指示書ってどんなもの?なぜ必要なの?
事前指示書とは、将来、自分の意思が伝えられなくなった時に備えて、終末期にどういうケアを受けたいと考えているのかを、自分の親しい人や医療従事者に伝えるためのものであると同時に、自分に代わって判断を任せる人を指定するものとなっています。
医療の進化に伴って、病気になっても最悪の事態を回避できるケースが増えていますが、自分に万が一のことがあった時に、延命治療を望むかどうかなど、もしもの時のために準備しておく指示書となっています。
事前指示書はどうやって作成する?書式はあるの?
もしもの時、自分の意思が表せない場合に備えて作成する事前指示書。
現在、全国で共通する事前指示書の書式はありませんが、各自治体や病院等が独自に作成した書式をダウンロード、もしくは、窓口でもらうことで作成することができます。
書式に沿って記入していけば事前指示書を完成させることができますが、基本的な内容はどのような治療を望むのかという内容的な指示と、自分が判断できなくなった場合に自分に代わって判断を任せる代理人について明記するという2つの点となっています。
ただし、医療やケアについての希望を追加したい、代理人の人数を増やしたい、という希望がある場合、追加したい項目について自由に記入することが可能となっています。
半田市が作成する事前指示書の内容
半田市が作成している事前指示書のフォーマットでは
- 自分に代わって医療・ケアの判断をしてもらう代理判断者の選択
- 自分の病気が治る見込みがない場合、延命治療を受けるかどうかについての希望
- 残された人生を『自分らしく過ごす』ために望むこと
の3つについて記載するようになっています。
(https://www.city.handa.lg.jp/hoken-c/kenko/iryo/hoken/documents/jizensijisho.pdf
https://www.city.handa.lg.jp/kikaku/shise/koho/shiho/h26/documents/1435_19.pdf)
どういうことを記入したらいいのか分らないという方も多いと思いますが、終末期に望むこととして多いものがいくつか記載されているため、チェックボックスにチェックを入れていくだけで作成することができます。
国立長寿医療研究センターが作成する事前指示書の内容
また、国立長寿医療研究センターが作成している事前指示書のフォーマットは、
- 痛みをどうしたいか、また、終末期をどこで迎えたいのかなどといった基本的な希望
- もしもの時に心臓マッサージや人工呼吸器といった延命措置を受けるかどうか、食事が口からとれなくなった場合に胃瘻や鼻チューブによって栄養補給をするかどうか、点滴による水分補給をするかどうか、など、終末期にどのような治療を受けたいかについての希望
- 自分の判断を伝えることができなくなった時に、自分に代わって主治医と相談し、医療・ケアの方針を決定してもらう人
の3点について記載するようになっています。
(http://www.ncgg.go.jp/hospital/news/documents/hospiceinvestigation.pdf
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000217/217933/jizenshijisyo.pdf)
一般的に、医療従事者以外の方は医療についての説明をされても、よく理解できないという方も多いと思いますが、このフォーマットでは、各項目についての詳しい説明も記載されているため、どのような医療・ケアを受けることができるのかについて、きちんと理解しながら作成することができるようになっています。
事前指示書を作成している人はまだまだ少ない
『終活』など、亡くなったときのことなどを考えて、準備をしているという方は増えてきていますが、事前指示書を作成しているという方はまだまだ少ないようです。
終末期の医療やケアについて、独立行政法院東京都健康長寿医療センターが調査を行っていますが、この調査結果によると、“終末期にどのような医療やケアを受けたいか”ということについて、家族と話し合ったことがあるという方は44%、記録として残しているという方は12%にとどまっています。
また、この調査の際に、終末期のことを書き記すために作成したライフデザインノートに、自分の希望や考えを記入してもらうという調査も行いましたが、「いざという時には考えが変わるかもしれない。」「死ぬ時というのが想像できない。」「迷惑をかけないようにという以外、希望はない。」などの理由で、希望を書き記すことができなかったという方が多く見られています。
確かに、その時その時で考えや希望は変わるものですが、今の時点においての考えや希望を書き記し、伝えておくことによって、あとを託された方が、本人の意思や希望を踏まえた選択をしやすくなります。
もしもの時にはどのような治療を望むのか、また、自分で判断できなくなっていた場合に誰に判断してもらうのか、事前に決めて書き記しておくことによって、最期まで自分の意思を尊重した治療を受けることが可能になるので、事前指示書を作成することをオススメします。
事前指示書を書くだけでなく、周りとも話し合おう
事前指示書は、いざという時に自分がどうしたいのかという希望を記すもの。
ただし、書くことが目的ではなく、周りときちんと話し合うことが大切となります。
家族や代理人に指定したい人、かかりつけ医と相談して作成することで、自分がどのように考えているのかをしっかり伝えることができます。
なお、事前指示書は一度作成したら変更ができないというものではなく、気持ちが変わった時には書き直すことが可能となっています。
周囲や自分の状況によって気持ちは変化するものなので、一度作成したら終わりではなく、定期的に見直すようにするといいですよ。
また、作成した事前指示書は、自分に何かあった時に見つけてもらうことができなければ、結局自分の意思を伝えることができないことになるため、必ず見つけてもらうことができる場所に保管するか、誰かに保管場所を伝えておくことが大切です。
事前指示書通りにいかない場合も
基本的に医療・介護は本人の希望を尊重して行うものですが、事前指示書は、法的な強制力を有する者ではないため、自分の希望によって事前指示書を作成した場合でも、事前指示書通りの医療・ケアを受けることができない場合があります。
もし、治療を拒否されていた場合でも、治療によって患者様の利益が大きいと医師が判断した時は、治療することでどのような効果や負担があるのか、詳しく説明し、納得できる方法が選択されます。