仕事で役立つ情報

なぜ起こる?食べ物以外を口にしてしまう高齢者の異食とその対処方法

なぜ起こる?食べ物以外を口にしてしまう高齢者の異食とその対処方法

異食とは、ごみや自分の排泄物など、食べ物ではないものを口にしてしまう行動を指す言葉。

認知症が進むと、人によっては「異食行動」という行為が現れることがあります。

異食行動はなぜ起こるのか、異食行動が見られたときにどのように対策をすべきか解説します。


目次

  1. 時には命にかかわることも。高齢者の異食の恐ろしさ
  2. 異食行動が起こるさまざまな理由
  3. 食べ物でないと認識できなくなってしまうため
  4. 空腹状態のため
  5. ストレス、精神的な不調のため
  6. 異食は未然に防げる?やっておきたい対策とは
  7. 異食しやすいものを目の届くところに置かない
  8. 食事の回数を増やしてみる
  9. 異食行動が起こる時間をチェックしておこう
  10. こんなときどうする?異食に気づいたときの対処方法
  11. 無理に口をこじあけようとしない
  12. 食べ物をあげて口のなかを見てみる
  13. 異食して詰まらせてしまったときは…
  14. 異食は抱え込まず医師に相談を


時には命にかかわることも。高齢者の異食の恐ろしさ

認知症の中期以降に見られやすい高齢者の異食。

個人差はありますが、落ちているものや目に入ったものをなんでも口に運び飲み込んでしまいます。


便やティッシュなどを手当たり次第に食べてしまうと聞くとぎょっとしてしまうかもしれませんが、認知症の高齢者にはよく見られる症状のひとつです。

なかには、ビニールやたばこの吸い殻、漂白剤など、中毒や窒息などを引き起こし、命にかかわる危険なものもありますから異食は深刻です。


介護をしている人はうかつに目を離すことができないうえ、汚物を触ってしまい汚れた手を壁や寝具で拭ってしまう…などの症状が現れはじめた場合、大きなストレスを抱えてしまうケースも少なくありません。

高齢者の異食行動はいったいなぜ起こってしまうのでしょうか。


異食行動が起こるさまざまな理由

高齢者が異食行動を起こしてしまう理由はさまざまです。

主に次のような理由が考えられます。


・食べ物でないと認識できなくなってしまうため

 認知症の中核症状に、見たものを正しく認識することができない「失認」と言われる症状があります。

 認知症の人のなかには、見ただけではそれを食べ物ではないと認識することができず、なんでも口に入れてしまうということが起こるケースがあるのです。

 口に入れたところで認識できれば吐き出すことができますが、認知症が進むと口に入れても判断がつかず、そのまま飲み込んでしまうため重大な事故を引き起こしてしまうこともあります。


・空腹状態のため

 認知機能が低下することで、満腹だと認識することができず、十分に食事を摂っていても空腹に感じてしまうことがあります。

 おなかが空いていたから…と、手の届くところにあるものを口にしてしまうのも異食行動の原因のひとつだといわれています。


・ストレス、精神的な不調のため

 ストレスが溜まっているときに甘いものが食べたくなったり、美味しいものをたくさん食べて発散しようとしたり…ということは健康な人にもよくあることですよね。

 異食行動を起こす人も同じで、ストレスや精神的な不調が原因で「食べる」行為にはしってしまうケースが多く見受けられます。


異食は未然に防げる?やっておきたい対策とは

認知機能の低下が原因で起こってしまう異食行動は、残念ながら「食べないように」と言い聞かせることで未然に防ぐことはできません。

では、どのように対策すればいいのでしょうか。


異食しやすいものを目の届くところに置かない

まずは、高齢者が異食しやすいものを行動範囲に置かないことが大切です。特に飲み込んだときに危険性の高い電池や洗剤、ビニール袋などは隠して管理することが大切です。

とはいえ、片っ端から身の回りの物を撤去してしまうと、環境の変化に不安を感じてしまう人もいます。

人によって異食する対象や異食しやすい時間は異なるので、様子を確認しながら危険なものだけを適切に取り除く配慮も必要だといわれています。


食事の回数を増やしてみる

空腹感や「食べたい」という欲求のために異食行動を起こしてしまう人の場合、食事回数を増やすことで異食を防ぐことができる可能性があります。

朝食、昼食、夕食のほか、おやつを数回に分けて食べてもらうなどの工夫してみましょう。

ただし、摂取カロリーが過剰に増えてしまわないよう、食事の内容には注意が必要です。


異食行動が起こる時間をチェックしておこう

おやつどきや夕方など、決まった時間に異食をする習慣があるタイプの人の場合、異食が起こりやすい時間にお茶の時間を設けたり、散歩にでかけたりすることで異食がおさまるというケースもあるようです。異食が起こっている場合は、何時頃に起こりやすいかチェックしてみましょう。


こんなときどうする?異食に気づいたときの対処方法

もしも異食している現場に遭遇したとき、思わず口に手を入れて吐き出させようとしてしまいがちですが、実は対処方法としてはNGです。

正しい対処方法を知っておきましょう。


無理に口をこじあけようとしない

異食を見つけたとき、無理に口をこじ開けて吐き出させようとすると、かえって口を閉じてしまったり、詰まらせてしまったりする原因になります。

また、反射的に噛まれてしまってけがをしてしまうケースも考えられるため、口に手を入れて吐き出させようとするのはタブーです。


食べ物をあげて口のなかを見てみる

自然に口をあけてもらう方法としては、食べ物をあげてみるのもひとつの手です。

食べているときに口のなかを見て、食べてはいけないものを食べてしまっていないか確認してみましょう。

また、歯みがきを促してみるのもおすすめです。


異食して詰まらせてしまったときは…

異食で恐ろしいのは、洗剤やたばこ、薬などを誤飲してしまったときの中毒と窒息です。

中毒の場合、吐かせるべきかどうか、水を飲ませるべきかどうかは異食をしたものによって対処方法が異なるので注意が必要です。

中には、安易に水を飲ませてしまったり、吐き出してしまったりするとかえって危険なものもあります。


中毒が起こってしまった場合は、異食をしたものが近くにないか確認し、わかれば残っている分量をチェックしておきます。

それから中毒110番もしくは救急ダイヤルに電話をかけて指示をあおぎましょう。


窒息の場合は、まずは第一に救急車を呼びましょう。

対応が早ければ早いほど後遺症などのリスクは低下しますので、慌てず冷静に119番をするのが大切です。

救急車が到着するまでのあいだに異物を取り除ければベストですが、無理に口に手を入れて取り出そうとするとかえって奥に押し込んでしまうリスクもあります。


覚えておきたいのは次のふたつの方法です。


☆背部叩打法(はいぶこうだほう)

背後にまわり、後ろから片手で胸もしくは下あごを支え、うつむきの状態にさせます。

もう片方の手のひらのつけねで、肩甲骨の間を強くトントンとたたきます。異物を吐き出すまで続けましょう。


☆ハイムリック法

おなかを背中から抱えあげ、みぞおちのところにこぶしを突き上げることで異物を吐かせる「ハイムリック法」という方法もあります。


異食は抱え込まず医師に相談を

もしも認知症の家族に異食行動が見られた場合は、すみやかにかかりつけの医師に相談するようにしましょう。

また、そのとき「いつ」「どのようなタイミングで」異食が起こっているかチェックし、伝えておくとスムーズです。


異食はけっして珍しい症状ではありません。

異食が起こり始めたときは身内だけで抱え込もうとせず、ケアマネジャーを通じて専門家のアドバイスを受けましょう。

在宅で介護をしている場合、介護サービスを適切に利用することで家族の負担を軽減することもできますから、上手に付き合っていくことが大切です。